皆さん、こんにちは!
東京コンサルティンググループ名古屋拠点の片山眞沙です!
いつもブログをお読みいただきありがとうございます。
さて、今回は「【タイ進出企業向け】タイの会計基準(TFRS)とは?非公開会社(NPAEs)の簡略化ポイントを解説」についてお話していこうと思います。
はじめに
これまでのブログでは、タイのe-Tax Invoice制度について整理してきましたが、タイ進出や現地法人管理について調べる中で、会計基準についても違いが沢山ありました。
その中でも、今回特に気になったのが、タイでは「公開会社」と「非公開会社」で適用される会計基準が異なる点です。
日本では、本社側基準に合わせてグループ管理を行っている企業も多い一方、タイでは非公開会社(NPAEs)向けに簡略化された会計基準が採用されています。さらに、タイでは2023年1月より「改正TFRS for NPAEs(2022年改訂版)」が適用されており、固定資産の再評価モデル導入など、実務面でもアップデートが行われています。
今回は、タイの会計基準(TFRS)の概要と、NPAEsにおける特徴について整理していきます。
タイの会計基準(TFRS)とは?
TFRS(Thai Financial Reporting Standards)とは、タイで適用されている財務報告基準です。タイでは、上場企業や金融機関などの「Publicly Accountable Entities(PAEs)」に対して、IFRSベースのTFRS適用が求められています。一方で、非公開会社については、「TFRS for NPAEs(Non-Publicly Accountable Entities)」という別基準が存在しています。
このNPAEs基準は、中小企業や非上場会社向けに設計されており、公開会社向け基準よりも実務負荷が軽減されています。
NPAEsとは?
NPAEsとは、「公開市場で資金調達を行っていない非公開会社」を指します。
例えば、非上場会社、一般的な中小企業、一部の日系現地法人、オーナー系企業が該当します。また、タイ進出している日系企業でも、現地法人がNPAEsに分類されることは珍しくありません。
非公開会社(NPAEs)では何が異なるのか?
一部開示項目が簡略化されることが大きな違いです。NPAEsでは、PAEsと比較して以下の開示要件が簡略化または限定されています。
・EPS(1株当たり利益)
・一部関連当事者取引開示
・キャッシュフロー関連項目 そのため、日本本社側では追加資料を求める一方、タイ側では「そこまで開示不要」という認識になり、確認作業が増えることもあります。
包括利益計算書が不要となる場合がある
PAEsでは包括利益計算書作成が一般的ですが、NPAEsでは簡略化された財務諸表構成が認められています。そのため、日本本社がIFRSやJ-GAAPベースで管理している場合、タイ側との資料差異が発生します。
連結財務諸表が免除される場合がある
NPAEsでは、一定条件下で連結財務諸表作成が免除されています。一方、日本本社ではグループ連結管理を行うため、日本側は連結管理を行い、タイ側では単体管理するという違いが生じます。この差異により、連結パッケージ作成時に追加調整が必要となることもあります。
2023年改訂「TFRS for NPAEs」で何が変わったのか?
2023年1月から適用されている改正TFRS for NPAEsでは、実務上いくつか重要な変更が行われています。例えば、固定資産の再評価モデル追加、継続企業前提に関する開示強化、金融商品関連ルール整理などが挙げられます。これまで取得原価ベースで運用していた企業でも、資産評価の考え方を見直す必要が出てくる可能性があります。
そのため、タイ進出済みの日系企業でも、「以前から同じ運用だから問題ない」と考えるのではなく、現地会計事務所と改めて基準確認を行う重要性が高まっています。
日系企業で実務上論点になりやすいポイント
日本本社ではIFRSやJ-GAAPベースで管理している一方、タイ現地法人ではTFRS for NPAEsを採用している企業もあります。その結果、勘定科目差異、開示範囲差異、連結パッケージ調整、監査対応などで追加作業が発生します。特にPMI初期では、日本本社・タイ現地法人・現地会計事務所の認識が一致せず、月次締めに想定以上の時間を要したという話もあるようです。
M&A時のDDで基準差異が論点になる
クロスボーダーM&Aでは、タイ企業側がNPAEs基準を採用していることも少なくありません。その際、日本側DDでは、EBITDA調整、関連当事者取引確認、のれん整理、開示不足確認などが論点になります。実際に、タイ企業買収時に、日本本社側が想定していた開示資料が不足しており、追加資料依頼が増えたという話も聞きます。
PMI時にERP・開示統一が必要になる
買収後のPMIでは、グループ会計基準統一、ERP統合、開示ルール統一、月次管理統一などを進める企業が多いです。ただし、タイ側ではNPAEs基準前提で運用していることもあり、日本本社側の管理レベルとの差に苦労する企業も少なくないようです。
【FAQ】TFRS for NPAEsでよくある質問
Q. 非公開会社は必ずTFRS for NPAEsを使うのでしょうか?
NPAEsに該当する企業であっても、通常TFRSを任意適用する企業があります。特に、日本本社側でIFRS統一管理を行っている場合、グループ整合性を優先して通常TFRSを採用するケースも見られます。
Q. IFRSと完全に同じなのでしょうか?
完全には同じではありません。
TFRSはIFRSベースですが、NPAEs向けには、キャッシュフロー計算書簡略化、包括利益計算書免除、一部開示省略など、大幅な簡略化が行われています。また、新基準導入タイミングがIFRS本家より遅れるなど、タイ独自運用も存在します。
Q. 日系中小企業でも関係ありますか?
タイ現地法人がNPAEsに該当する企業は多く、会計・監査・税務実務へ影響します。特に、日本本社との連結管理を行う企業では、会計基準差異の整理が重要になります。
タイ会計基準クイズ
最後に、今回の内容に関連したミニクイズです!
復習も兼ねて、ぜひ挑戦してみてください!
【第1問】
タイで、主に非公開会社向けに適用される会計基準はどれでしょう?
① TFRS for NPAEs ② TKG ③ IFRS for Pad Thai【第2問】
日本本社とタイ法人で会計基準が異なると、実務上起こりやすいことはどれでしょう?
① 月次締めの追加確認 ② 社内のタイ料理率上昇 ③ 経理担当者の睡眠時間増加【第3問】
2023年改訂のTFRS for NPAEsで追加された内容として近いものはどれでしょう?
① 固定資産の再評価モデル ② タイ語試験制度 ③ トゥクトゥク減価償却ルール最後までお読みいただきありがとうございました!
次回も、タイの制度・会計・M&A実務について発信していきます!
第1問 答え:① TFRS for NPAEs 第2問 答え:① 月次締めの追加確認第3問 答え:① 固定資産の再評価モデル
東京コンサルティングファームのサポート
東京コンサルティングファームでは、タイへ進出する日系企業向けに、会計・税務・会社設立・バックオフィス支援などを行っています。
電子税務対応や会計実務体制の整備についても、現地実務を踏まえたサポートが可能です。
タイ進出や現地管理体制についてご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
タイでは、公開会社と非公開会社で適用される会計基準が異なり、非公開会社(NPAEs)については一部基準が簡略化されています。また、2023年からは改正TFRS for NPAEsが適用されており、固定資産評価や開示面でもアップデートが行われています。
日本本社との連結管理や、クロスボーダーM&A、PMIを行う際には、こうした会計基準差異が実務上の論点になることも少なくありません。私自身、今後はタイ拠点業務に加えてM&A事業部も兼任する予定のため、タイを中心としたクロスボーダーM&Aや海外進出実務についても、引き続き発信していければと思っております。
東京コンサルティングファーム タイ拠点
片山眞沙