皆さん、こんにちは!
東京コンサルティンググループタイ拠点の太田 貴子です!
いつもブログをお読みいただきありがとうございます。
さて、今回は「【タイ進出・税務】タイにおける減価償却費の計上ルールと日本との違い」についてお話していこうと思います。
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・タイ関連セミナータイで会計・税務実務に携わっていると、日本と似ているようで実は大きく異なる論点のひとつが、固定資産と減価償却費の取り扱いです。特にタイでは、少額資産の扱い、償却開始のタイミング、税務上認められる償却率の考え方など、日本の感覚のまま処理するとズレが生じやすいポイントがいくつかあります。減価償却費は毎期の利益に直接影響するため、単なる経理処理ではなく、税務調整や固定資産管理とも一体で考えることが重要です。
タイでは「少額だから経費」が通用しにくい
日本では一定金額以下の資産について、少額減価償却資産や消耗品費として処理する発想が比較的なじみ深いですが、タイでは税法上、明確な金額基準が設けられていない点が大きな特徴です。1年以上使用する資産であれば、本来は固定資産として登録し、減価償却の対象とするのが基本的な考え方です。そのため、日本では一括費用になりやすいパソコンやスマートフォン、周辺機器なども、タイでは固定資産の対象となりやすくなります。
減価償却を始めるタイミングは「支払日」ではない
減価償却費をいつから計上するのかも、実務でよく迷いやすい論点です。タイでは、資産の代金を支払った時点ではなく、その資産が実際に使用可能となった時点から減価償却を開始する考え方が示されています。たとえば3月に支払いを済ませていても、納品や据付が完了して実際に使用できるようになったのが5月であれば、償却開始は5 月以降になります。購入契約日や送金日だけで判断せず、「会社で使える状態になったか」を基準に考えることが重要です。
また、期中取得や期中除却がある場合には、使用期間に応じた日割り計算が必要になります。設備投資が多い会社では、取得月と稼働開始月がずれることも珍しくないため、請求書だけでなく、納品記録や据付完了日、使用開始日まで追えるようにしておくと、後からの説明がしやすくなります。
タイ税務上の代表的な償却区分
タイの税務上、減価償却はかなり大まかな区分で整理されています。日本のように細かい耐用年数表を前提にするよりも、まずは大分類を押さえるほうが実務的です。代表的には、建物等は20年、コンピュータおよび周辺機器・ソフトウェアは3年、その他の多くの資産は5年で償却する考え方が基本になります。権利関係については、契約期間が明確な場合はその期間、期間が明確でない場合は10年がひとつの基準になります。
タイ実務では、「建物」と「その他資産」の区分をどう考えるかが論点になることがあります。一般的には、建物本体や建物と一体不可分の部分は建物・構築物として扱い、他方で取り外して別の場所でも使用できる設備は、建物ではなくその他資産として整理される傾向があります。この区分によって適用される償却率が変わるため、内装工事や付属設備の計上時には、請求書の内訳や実物の性質を見ながら判断することが大切です。
会計上の耐用年数と税務上のルールは同じとは限らない実務上とても重要なのが、会計上の見積耐用年数と税務上認められる償却限度は、必ずしも一致しないという点です。会計では、実際の使用見込みや社内規程に基づいて、合理的な耐用年数を設定することができます。したがって、資産の実態に応じて、税務基準より長く償却することも、逆に短めに見積もることも、会計上はあり得ます。
ただし、会計上の償却が税務上よりも早い場合、つまり会計上の費用計上が先行する場合には、その差額を法人税申告書で加算調整し、損金不算入として処理する必要があります。一方で、会計上の償却が税務上より遅い場合は、一般に税務上問題になりにくいとされています。ここを理解せずに「会計で落としているから税務もそのままでよい」と処理してしまうと、申告調整漏れにつながりかねません。
修繕費なのか、資産計上なのかも見落とせない
減価償却費の計上を考えるうえでは、「その支出がそもそも費用なのか、資産なのか」という入口の判断も大切です。タイ実務では、単なる現状維持のための修理は修繕費として処理される一方で、機能向上、増設、改良、拡張のための支出は資産計上すべきものとして扱われます。つまり、同じ設備に対する支出でも、その内容次第で当期費用になるのか、将来にわたって減価償却するのかが変わります。特に工場設備やオフィス改装では、この判断が利益に与える影響が大きいため、請求書の記載や工事内容の説明資料を残しておくことが重要です。
まとめ
タイにおける減価償却費の計上では、まず「1年以上使うものは原則として固定資産」
という考え方を押さえたうえで、使用可能となった日から償却を始め、資産区分ごとの税務ルールに沿って処理していくことが基本になります。さらに、会計上の見積耐用年数と税務上の範囲が一致しない場合には、法人税申告での調整も必要になります。
日本と似た感覚で処理してしまうと、少額資産、車両、設備区分、修繕費判定などでズレが出やすいため、タイ独自のルールに合わせて台帳整備と申告管理を行うことが大切です。
東京コンサルティングファーム タイ拠点
太田 貴子