米国の金融情報会社S&Pグローバルが2026年9月1日に発表した内容によりますと、8月のミャンマー製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.3となりました。7月の49.3から1.0ポイントの上昇であり、景気の拡大・悪化の分岐点である50.0を、実に4カ月ぶりに上回ったことになります。
PMIとは
PMIとは、製造業の購買担当者を対象に、生産高や新規受注、在庫水準、雇用状況などについて調査を行い、これらを一定のウエートで加重して算出される指数です。50.0を「前月から横ばい」の基準とし、これを上回れば「改善・増加」、下回れば「悪化・減少」を意味します。指標として単純であるがゆえに、市場関係者からは毎月注目される数字です。
「景気回復」と即断するのは早計
もっとも、今回の数字を単純に「景気回復」と受け止めるのは早計と考えられます。生産高、新規受注はいずれも引き続き減少しております。減少率がそれぞれ直近5カ月、4カ月で最も小さくなったというにとどまり、プラスに転じたわけではございません。減少の要因としては、需要の弱さ、従業員の病欠、原材料不足、物価上昇が挙げられており、これらはこれまでミャンマー製造業が抱えてきた課題と重なります。
一方で見られる明るい材料
一方で、明るい材料も見られます。一部の企業では新規受注や製造需要が実際に増加したほか、必要な時期に先立って資材を調達する動きも確認されました。この結果、購買活動は5カ月ぶりに増加し、その増加幅は2023年半ば以来の大きさとなりました。原材料などの投入品在庫につきましても、約1年ぶりに増加に転じております。
在庫増加と受注残をどう読むか
この在庫増加をどう捉えるかについては、慎重な検討が必要と考えられます。一見すると「今後の生産拡大に向けた準備が進んでいる」という前向きな解釈が可能です。しかしながら、供給面では原材料不足や輸入ライセンス取得の難しさから、納期の長期化が引き続き見られております。この点を踏まえますと、積極的な生産拡大に向けた動きというよりも、原材料不足や輸入制約への備えとしての、予防的な在庫確保という側面が強い可能性も考えられます。
受注残(受注済みでありながら未納品の製品)につきましても、労働力および原材料の不足を背景に増加いたしました。ただし、増加のペース自体は大幅に鈍化しており、こちらも力強い伸びとは言い難い状況です。
雇用の動きと現場の声
雇用につきましては、4カ月にわたり増加が続いておりましたが、自発的な退職により減少に転じました。企業側が人員を削減しているというよりも、従業員の離職が要因となっている点がうかがえます。なお、減少幅自体はわずかにとどまっております。
数字の背景にある実態を把握するうえでは、現場のヒアリングが有用です。9月2日に実施されたヒアリングにおいて、ある日系縫製企業の経営者は次のように述べております。「本社契約分がほとんどなので受注は安定している。離職率は月4~5%程度だが、補充人員を募集しても採用するのが前年に比べ困難になっている」。受注自体は日本本社との契約が中心であるため大きな変動は見られないものの、現場を支える人材の確保が年々厳しさを増しているとのことです。月次の離職率4~5%は、単月で見ますと大きな数値には見えませんが、この水準が継続した場合、年間では相当数の人員が入れ替わる計算となります。採用難が続けば、納期対応への影響も懸念されるところです。
S&Pのエコノミスト、マリアム・バルーチ氏も、今回のPMIについて慎重な見方を示しております。回復の兆しがあることは認めつつも、今後1年間の生産見通しについては、大半の企業が横ばいを予想しているとし、回復の持続性については依然として見極めが難しいと分析しております。
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東京コンサルティングファーム ミャンマー拠点
渡辺 晃