先日のトヨタ自動車の株主総会にて、豊田章男社長がした例え話。
『ロバと老夫婦の話』
ロバを連れながら老夫婦が2人で歩いてるとこう言われました。
「ロバがいるのに乗らないのは馬鹿だ!」
また、ご主人がロバにのって奥様が歩いているとこう言われました。
「威張った旦那だ!」
また、奥様がロバにのって旦那さんが歩いているとこう言われました。
「あの旦那は奥さんに頭が上がらないんだ!」
それではと、夫婦そろってロバに乗っているとこう言われました。
「ロバがかわいそうだ」
結局、何をやっても批判される。
全ての人を納得させるのは難しいのです。
管理職って、まさにそんな状態だと思います。
社長から言われたことをやろうとすると、部下から反発をされて・・・
部下の要望を叶えようとすると社長から待ったがかかる・・・
他部署からも言いたいことを言ってくる・・・
上から言われて下から言われて横からも言われて・・・
管理職って大変だと思います。
一体、どうすればよいのでしょうか?
そもそも、管理職というのは、役割が定まらないのです。
社長から見れば、自分から出した指示を実行してもらいたいと思っています。
部下から見ると、自分が言っていることを社長に伝えて欲しいと思っています。
また、違う部署の管理職からも連携したり、調整してほしいという要望があったりします。
そうすると、上から、下から、横から、いろんな要望がやって来ます。
この要望に全て応えることはできません。
まさに、ロバと老夫婦
全部にいい顔をしたら、破綻します。
かと言って、100%社長のYESマンだとしたら部下はついて来てくれません。
100%部下の話を聞いていたら社長から管理職失格!と言われます。
では、どうしたらいいんですか?
という話になります。
その答えは・・・
「自分で決める」です。
社長のことも、部下のことも、他部署のことも分かる立場です。
逆に言うと管理職のことは誰も分かりません。
だから、誰かにOKを求めても
誰からもOKが出ないのです。
自分で決めるしかないのです。
この時にどうやって決めるのか?
それは、会社の「ビジョン」にもとづいて判断すればいいのです。
会社の向かっている方向に近づくのであれば、社長だろうが部下だろうが他部署だろうが納得します。
つまり、組織が機能するためには「共通のビジョン」が必要なのです。
管理職が機能していない
という相談を受けることもあります。
もちろん、管理職の知識や経験が不足していることもあります。
しかし、管理職が機能するためには「共通のビジョン」が必要なのです。
問題は1つではなくて、いろいろな問題が重なって起こっていることが多いのです。
それを1つ1つ、解決していくことで、組織は機能するようになります。
私がいくつかの中小企業にコンサルティングを行っていて現場から感じる真の問題がここにありました。
中小企業において、社長と管理職の意識ギャップ、管理職と社員の意識ギャップが蔓延していて、その意識ギャップが組織の実行力に大きな悪影響を与えてしまっています。
その意識ギャップが生まれる原因こそ、「共通のビジョン」がないということでした。
ただ、実際の現場で起きている現象はもう少し複雑で、社長自身はビジョンを示していると思っていて、管理職はそのメンバーの中でビジョンの認識がズレていて、社員はビジョンがないと認識している状態という中小企業がほとんどだと思います。
なので、「共通のビジョン」が無いから、ビジョンを作って掲げましょうという提案をすれば、社長は怒ります!
社長は、自分にはビジョンがあり、そのビジョンは毎日のように伝えていて、そこに近づいていかないのは、ビジョンが無いからではなくて、社員が実行しないからだと思っているからです。
なので、私たち(コンサルタントや管理職メンバー)が最初にやらなければいけないことは、社長に「今のビジョンが管理職や社員に正しく伝わっていないですよ」ということを認識してもらうところです。
ここの擦り合わせができれば、会社は前に進んでいきます。
豊田章男社長は「自分で決める」ことだと言っていました。
これは、「共通のビジョン」を理解するために自分の頭で考えろということだと私は思います。
相手の言葉をそのまま受け取るのではなくて、
- 「なぜ、そのようなビジョンを掲げるのか?」
- 「このビジョンを掲げようと思った背景は何か?」
- 「なぜ、ビジョンに対する認識がズレるのか?」
を自分の頭で考えることで、社長に対するコメントも的を射たものとなり、対話も建設的になります。
組織がバラバラになっていると感じたら、「共通のビジョン」についてのディスカッションから始めることが大事なのだと思います。