会計・税務
1.会計制度
インドネシアの会計実務は、2007年会社法に加え、2025年より本格運用されている税務総局(DGT)の新システム「Coretax(コアタックス)」との親和性が不可欠となっています。
記帳通貨の選択と「Coretax」リスク: 原則はルピア建て・インドネシア語です。USドル記帳は財務省の許可制ですが、2025年現在の実務では、税務申告のデジタル化が進んだことで、外貨記帳に伴う「税務用と会計用の差異」がシステム上で弾かれるリスクが増大しています。安易な外貨選択は、税務調査の自動抽出対象になりかねません。
会計期間の「初期設定」の重要性: 依然として会計期間の変更は税務調査のトリガーとなります。特に近年、システム統合により「親会社との決算期のズレ」を調整する期間の税務処理が厳格化されており、設立初年度の整合性が将来のコンプライアンスコストを左右します。
目次
2.会計基準:SAK-ETAPの廃止と「SAK-EP」の全面施行
2025年1月1日より、これまで多くの中小・中堅日系現地法人が採用していた「SAK-ETAP」が廃止され、より国際基準に近い「SAK-EP(私的実体向け財務会計基準)」へと完全移行しました。
SAK-EPへの対応: SAK-EPは「IFRS for SMEs」をベースにしており、旧基準(ETAP)では認められていた簡便的な処理が一部制限されています。
人材不足の深刻化: 最新のSAK-EPを正確に理解している現地経理スタッフは極めて限定的です。2025年時点でも「旧基準のやり方」で記帳を続けるスタッフが多く、決算期に外部監査人から大幅な修正を迫られるリスクが急増しています。
3.IFRS(国際会計基準):縮まるタイムラグと
「SAK International」
インドネシア会計士協会(IAI)は、IFRSとの完全な一致を目指す「SAK Internasional」への移行を加速させています。
1年のタイムラグへの対策: 依然として本家IFRSとインドネシア基準(SAK)の間には数ヶ月から1年の導入ラグが生じる場合があります。しかし、2025年現在では「サステナビリティ開示(ISSB準拠)」など、最新の国際テーマが急速に導入され始めています。
連結決算の壁: 親会社(日本)が採用する基準と現地基準の「わずかな差」が、連結パッケージ作成時の手戻りを生みます。弊社では、最新のSAK-EP/Internasionalと日本基準の差異を事前にマッピングし、決算早期化を支援します。
4.開示制度:電子提出(OSS-RBA)との連動強化
インドネシアでは、規模にかかわらず「財務諸表5点セット(BS、 PL、 CF、 持分変動、 注記)」の作成が必須です。
提出スケジュールの厳格化: 2025年より、OSS(オンライン・シングル・サブミッション)システムを通じて、投資活動報告書(LKPM)と財務諸表のデータ整合性がより厳しくチェックされるようになっています。
・確定申告: 決算日から4カ月以内。
・株主総会(GMS): 決算日から6カ月以内。
・証憑の電子保存: 10年間の保存義務は変わりませんが、税務当局はデジタル証憑での提示を優先して求めるようになっています。
5.監査制度:PMA(外資企業)に対する「透明性」の
要求
外資企業(PMA)は、引き続き規模に関係なく公認会計士による外部監査が義務付けられています。
2025年の監査環境: 近年、監査法人に対する当局(財務省公認会計士監視局:PPPK)の監督が強化され、形式的な監査報告書は受理されないケースが増えています。
実務的防波堤の必要性: 「監査済み」であっても、内容がSAK-EPに準拠していなければ、税務調査で否認されるリスクがあります。弊社は、現地の監査法人が貴社のビジネス実態を正しく理解しているかを監視し、不当な指摘に対しては論理的に対応します。
7.インドネシアにおける税務
2025年のインドネシア税務は、歴史的な転換点を迎えています。
2025年1月より本格運用が開始された次世代税務管理システム「コアタックス(Core Tax Administration System)」により、税務行政は完全にデジタル化されました(財務大臣規則PMK 81/2024)。
これにより、納税者番号(NPWP)と住民登録番号(NIK)の統合が完了し、法人・個人を問わず、登録、申告、納税、還付、さらには税務調査の通知までが単一のデジタルプラットフォーム上で完結します。
当局によるデータの把握精度は飛躍的に向上しており、企業にはこれまで以上に「申告内容と実態の整合性」が厳格に求められる時代となっています。
8.インドネシア進出にかかわる税務
進出形態(駐在員事務所、支店、現地法人)の選択は、依然として重要な意思決定項目です。
・駐在員事務所(KPPA): 営業活動は禁止ですが、コアタックス導入により、給与源泉(PPh21)や事務所賃借料(PPh4(2))の申告漏れが自動検知されやすくなっています。
・支店(BUT): 支店利益に対する「分岐点利益税(Branch Profit Tax)」が発生しますが、2025年より全面適用されている新・日インドネシア租税条約議定書により、一定の条件下で税率が軽減される等の恩恵があります。
・現地法人(子会社): 標準法人税率は22%です。利益還流時には、移転価格ドキュメント(TPD)の整備が「あれば望ましい」レベルから「なければ追徴を免れない」必須要件へと厳格化されています。
9.インドネシア国内税法
2025年の最大の変更点は、付加価値税(VAT)の標準税率が12%に引き上げられたことです(2021年法律第7号「HPP法」および施行規則)。
法人所得税: 原則一律22%ですが、売上高500億ルピア以下の企業に対する軽減税率(11%)は継続されています。
付加価値税(VAT): 2025年1月1日より12%が適用。ただし、生活必需品や公共サービスの一部には非課税、または実効税率を抑える特例が設けられており、インボイス(e-Faktur)の管理にはより細かな分類が求められます。
個人所得税: NIKとNPWPの完全統合により、居住者の全世界所得の捕捉が強化されました。給与計算(PPh21)には、2024年から導入されたTER(平均実効税率)方式が定着し、月次の計算事務は簡素化されたものの、年度末の精算義務は依然として重要です。
10.インドネシアにおける税務調査
現在の税務調査は、コアタックスに搭載されたAIによる「自動スクリーニング」から始まります。
SP2DK(説明要請書): 当局のシステム内でデータの乖離(例:法人税申告書とVAT申告の不一致)が発見されると、即座に自動発行されます。2025年現在、この回答の妥当性が、本格調査(Audit)への移行を左右する最大の分岐点となっています。
還付申請: 12%へのVAT増税に伴い、還付を申請する企業が増加していますが、還付申請は「100%調査対象」となる原則に変更はありません。
11.源泉徴収制度
複雑多岐にわたる源泉徴収制度は、すべて「e-Bupot Unifikasi(一元化電子源泉徴収票)」システムへ統合されました。
PPh 21(給与)、22(輸入)、23(サービス)、26(国外支払)、4(2)(最終分離課税)のすべてがオンラインで管理されます。
非居住者への支払い(PPh 26)については、租税条約の適用に不可欠な「居住者証明書(DGT Form)」のオンライン提出が厳格化されており、手続きの遅滞は即座に20%の課税に直結します。
12.国際税務
2025年より、インドネシアでもグローバル最低課税(15%)制度が施行されました(財務大臣規則PMK 136/2024)。
連結総収入が7.5億ユーロ以上の多国籍企業グループに属する日本企業は、インドネシア国内での実効税率が15%を下回る場合、追加課税(Top-up Tax)の対象となります。
これにより、これまで利用可能だった各種免税措置(タックス・ホリデー等)の効果が一部相殺される可能性があり、グローバル全体での税務戦略の再構築が必要です。
13.日インドネシア租税条約の最新動向
2023年末に署名された「日・インドネシア租税条約改正議定書」が、2025年度の取引より本格的な影響を与えています。
ロイヤリティ: 以前は一律10%でしたが、改正により特定の権利については税率がさらに軽減、または明確化されました。
恒久的施設(PE): コンサルティングPEの認定期間や、デジタル経済下でのPE認定リスクについて、最新のOECD指針に準拠した運用が進んでいます。
14.まとめ
現在のインドネシア経営で求められているのは、日々アップデートされるシステム(Coretax)や新会計基準(SAK-EP)への「即応性」と、現地スタッフを動かす「徹底したマニュアル主義」です。
弊社ではインドネシアでの会計サポートの相談から法的手続き、税務手続き、税務調査、ビザ、全部一気通貫でサポートが可能です。インドネシア事業を「法務・会計の迷宮」に迷い込ませない。そのための実務的な羅針盤として、私たちが伴走いたします。お困りのことがありましたら、お気軽にお問い合わせください。