ベトナムの会社法

会社の機関

ベトナムの会社法務における重要な法律として、統一企業法があります。

統一企業法は、ベトナムでビジネスを営む内国企業、外国企業など国籍を問わず、すべての企業に適用されます。

統一企業法におけるベトナムの会社形態は、
有限会社、株式会社、合名会社、私営企業の4種類です。

本章では、日系企業がベトナムへ進出する際に最も一般的に用いられている有限会社及び株式会社の、機関設計、社員および株主総会(Members’ Council)、決議方法、組織運営、社員(有限会社における出資者/Obligations of Members)および株主の権利と義務、会長(Chairman of the Company)・社長(General Director)・監査役(Inspectors)の権利と義務などについて述べていきます。

 

有限会社

有限会社には二人以上有限会社と一人有限会社の2つがあり、ベトナムにおける最も一般的な会社形態です。

これまで進出している日本企業の多くがこの形態で進出しています。

組織でも個人でも出資者である社員になることができますが、株式を発行することができず、社員の総数が最大で50名までと決まっています。社員は、会社への出資額の範囲内で、会社の債務およびその他支払義務に対して責任を負います。

2人(組織)以上の出資者による形態は二人以上有限会社、1人(組織)の出資者による形態は一人有限会社と、統一企業法上、分けて記載されており(二人以上有限会社は46~73条、一人有限会社は74~87条にそれぞれ規定)、機関設計が異なりますので、それぞれの会社に合った形態を把握した上で、選択する必要があります。

 

一人有限会社

一人有限会社は、出資者が1名の会社であり、会社の機関設計は、会長、社長、監査役により構成されます。

監査役会の設置をしなくても、問題にはなりませんが、実務上、少なくとも、定款には監査役を記載しなければなりません。

出資者は、委任代表者を選任します。1名選任する場合、その委任代表者がそのまま会長となります。委任代表者を複数選任する場合は、その中から会長を選任することになります。

会長とは、社員総会により任命され、出資者に代わり会社を代表して業務を遂行する者をいいます。

社長とは、社員総会または会長より任命され、事業活動の運営および会長(もしくは社員総会)により意思決定された事項の執行を行います。

法的代表者(サイン権者)を会長もしくは社長から選ぶことができ、定款に記載する必要があります。法的代表者に国籍の制限はありませんが、ベトナム常駐の要件があり、30日以上ベトナム国外に滞在する場合には、書面にて他者に委任する必要があります。

 

二人有限会社

二人以上有限会社は、出資者が2~50名までの会社であり、会社の機関設計は、社員総会、会長、社長により構成されます。

監査役会の設置について、これまで出資者が11名以上の全ての企業を対象に義務付けられていました。2020年企業法で国営企業とその子会社である二人以上有限会社が対象となることが定められています(54条)。

会社の意思決定は、出資者全員により構成される社員総会によって行われます。会長および社長には社員総会において1名が出資者の中から、選任されます(会長と社長の兼任可能)。それぞれの役割は後述の一人有限会社の場合と同様です。

社員総会

二人以上有限会社は、出資者が2~50名の会社で、社員総会、会長、社長により構成され、一定の要件を満たす場合には監査役会を設置しなければなりません。
会社の意思決定は、出資者全員により構成される社員総会によって行われます。会長及び社長は社員総会において1名を出資者の中から、選任します。それぞれの役割は一人有限会社と同様です。 会社への出資者が11名以上の場合、監査役会の設置が必要となります。

社員総会招集

社員総会は社員総会議長により招集されます。社員総会議長は、社員総会の日時や場所、議案等を示した招集通知を、電話や、招待状、FAX、その他の電子的手段によって、それぞれの社員に直接的に送付する必要があります(59条)。

招集をしたにもかかわらず定足数に満たなかった場合には、その開催予定日から15日以内に再招集を行います。この場合は出資総額の50%以上の出資者が集まれば開催することができます(定款で変更可能)。それでも定足数に足りない場合、10日以内に招集をする必要があり、この場合には定足数の要件はなく、開催することができます(58条)。

一方、複数の委任代表者がいる一人有限会社の場合、出資総額の3分の2以上の社員が出席する場合には、社員総会を開催することができます。なお日程等の手続は、二人以上有限会社と同様です。

株式会社

株式会社は有限会社と比較した場合、外国資本での進出実績がまだ少ないのが現状です。

その理由として、有限会社と比べ、株式会社での進出はいくつかの要件を満たさなければならないためです。

株式会社とは、次のような特徴を持つ会社形態です(111条)。

・資本が複数に分けられ、個々が持分として株式を保有する

・株主は組織でも個人でも認められ、株主の人数は最低3名であり上限はない

・株主は、会社への出資額の範囲内で企業の債務および財産上の義務についてのみ責任を負う(間接有限責任)

・株主は、議決権優先株式等を除き株式を自由に譲渡することができる

株式会社と有限会社の大きな違いは、株主(出資者)が3名以上必要である点、株式を発行し、出資者が自分の出資持分を自由に他者に譲渡できる点にあります。

株式会社の機関体系

株式会社は、株主総会、取締役会(Board of Management)、社長等の機関を設置しなくてはなりません。個人である株主が11名以上いる場合、または会社の総株式の50%以上を所有する法人株主を持つ場合には、監査役会を設置する必要があります。

監査役会を設置する場合は、3~5名から構成され、監査役の任期は5年以内となります。任期後も再任することができます。

監査役会の過半数がベトナムに常駐していること、および1名は会計士もしくは会計監査官であることが求められます(168条)。

 

株主総会

株主総会は、定時株主総会と臨時株主総会の2つの種類があります。

定時株主総会は、毎年1回以上、決算日以後4カ月以内にベトナム国内で開催しなければなりません。

取締役会の要請がある場合、開催までの期間を延長することができますが、決算日以後6カ月を超えることはできません(139条)。

定時株主総会では、決算書の承認や、配当の決定などを決議します。

一方、臨時株主総会は、取締役会が必要と認めた場合に開催されます。

また、一定の事項が発生した場合には、取締役会は臨時株主総会を招集する義務を負います。取締役会は、招集義務を生じさせる事項が発生してから30日以内に総会を招集しなければならず、期限内に開催されない場合は、監査役会が招集する義務を負います。

それでも招集がされないときには、6カ月以上継続して10%以上の株式を保有する株主が総会を招集することができます。

取締役(会)

株式会社は、原則として監査役を置く必要はありません。

しかし、 個人株主が11名以上いる場合、もしくは法人株主が会社の総株式の50% 以上を保有する場合のいずれかに該当するときには、監査役会を設置しなければなりません(137条)。

定款に別段の定めがある場合を除き、監査役会は3~5名で構成されます。監査役の任期は5年以内としますが、再任は可能です(168 条)。

株式会社の監査役会については、有限会社よりも厳しい条件が統一企業法に規定されており、監査役会の過半数はベトナムに常駐している必要があり、かつ企業の経営活動と関連する専門の中の1つに属する大学以上を卒業していなければならなりません。

ただし、会社の定款がより高い資格を定める場合は除かれます。さらに監査役のうち最低1 名は会計士または会計監査官、または同等の経験を有する者でなければなりません。

 

株式の種類について

株式会社は、株式を発行しなければなりません。株式の種類は主に普通株式と優先株式があります(113条)。

優先株式の中には、議決権優先株式、配当優先株式、償還優先株式などがあります。

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