中国の経済成長と税制度

こんにちは、中国・上海の田中勇です。

本日は中国における経済成長と税制の関係について取り上げます。中国はここ数年8%以上の経済成長率で成長しております。2012年度の第3四半期のGDP成長率が7.4%にダウンしたという発表がありましたが、日本における2011年のマイナス成長に比べるとはるかに高い成長率です。

中国の高い経済成長率の原因は、都市化の加速化、生産能力の向上、多額の税収確保等があげられます。このうち、税収の確保は、政府主導のモデル転換政策を実施する上で非常に大きな成功要因だと言えます。2011年度における中国の税収は、前年比22.6%増の8兆9,720億元(約112兆円)でした。一方、日本の税収は40.9兆円です。(2011年度の予算)日本とほぼ同じ経済規模(GDP)なのに、なぜ中国は日本の倍以上の税収確保ができるのでしょうか。それは中国における税金の仕組みが大きく影響しております。

下記が日本と中国の税収内訳です。
【日本の税収内訳】2011年度実績から作成 出所:日本財務省

【中国の税収内訳】2011年度予算から作成 出所:中国財務省

中国経済に大きな影響を与えている税金の項目として、私は3つあると認識しております。それは付加価値税、個人所得税、相続税です。

まず、付加価値税です。中国の付加価値税は56兆円 、一方日本は約10兆円です。つまり、中国は日本の5倍以上の付加価値税収入なのです。これは、中国の税率が高いことが大きな原因です。中国の付加価値税の税率は17%(増値税における標準税率の場合)です。日本の5%に比べると高い税率と言えます。ちなみに、この税率の高さは、中国で生活する日本駐在員も気づかないことが多いです。中国では、ほとんどすべての商品が内税の商品で表示されているからです。

次に、個人所得税です。日本は約13兆円(全税収の32%)、中国は7.5兆円です(全税収の7%)。なぜ日本と中国のGDP(500兆円レベル)がほぼ同じなのに、中国の所得税は日本の半分なのか。これは、中国では所得税を払っている国民がほとんどいないことが原因です。中国の所得税課税対象者は月収3,500元(日本円で約4万5,000円)です。一方、各省の平均月収は成都では2,834元、昆明では3,473元、その他平均月収が3500元に届いてない省が多くあります。つまり、ほとんどの中国国民が課税対象月収に届いていないと言えるのです。不正に個人所得税を払っていないという事実も含まれていると考えられますが、ある中国メディアによると所得税を払っている国民は1.8%だという報道まであります。個人への所得税の負担がほとんどないことで、働く意欲・消費のへ活性化につながっていると考えられます。

次に相続税です。中国では相続税、贈与税がありません。この相続税等がないために、個人間での財産の受け渡しが活発になり、経済の活性化につながっていると考えられます。経済の活性化こそが、ほかの税収入(所得税や付加価値税)を増やすことになるのです。お金持ちが有利な状況になってしまうことから、貧富の差が拡大してしまうというデメリットはありますが、経済の活性化という面では大きなメリットと言えます。ちなみに、中国に相続税等がないのは、中国の資産はすべてが国有資産であるという考え方からきております。

1つ目に挙げた増値税。次回は税制改正も絡めてお伝えいたします。よろしくお願いします。

以上

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