皆さん、こんにちは!
東京コンサルティンググループ中国拠点の小林 祐介です!

いつもブログをお読みいただきありがとうございます。

さて、今回は「改正『住宅積立金管理条例』が中国進出の日系企業に与える影響と罰則対応」についてお話していこうと思います。

2026年8月18日、中国国務院は「住房公積金管理条例」の改正を正式に公布しました(国務院令第844号、出典:中国政府網 https://www.gov.cn/zhengce/zhengceku/202608/content_7078478.htm)。施行日は2026年9月20日です。不動産市場の構造的な調整が進む中、10兆元を超える住宅積立金をより柔軟に活用させるという狙いがありますが、企業側の義務と罰則は大幅に強化されています。日系企業にとって「知らなかった」では済まされない改正内容を、実務の視点から整理します。

中国の改正「住宅積立金管理条例」の概要とは?

住宅積立金(住房公積金)とは、企業と従業員が毎月一定割合を拠出し、住宅購入やローン返済などに充てる中国独自の強制貯蓄制度です。今回の改正は2002年の条例制定以来、24年ぶりの本格的な見直しとなりました。

主な改正ポイントは以下の通りです。

用途の拡大

従来の住宅購入・ローン返済に加え、「自宅のリフォーム(装修)」および「管理費(物業費)の支払い」が新たに引き出し事由として追加されました。従業員にとっては資金の使い勝手が大きく向上します。

フレキシブル就業者への門戸開放

個人事業主やギグワーカーなど、従来は制度の対象外だった層が任意加入できるようになりました。地方政府が具体的な実施細則を定めます。

手続きの迅速化

引き出し申請の審査期限が「受理から3日以内」に、住宅ローン審査が従来の15日から「10日以内」に短縮されました(改正条例第25条・第26条)。

デジタル化・全国互認

異なる都市間での積立金データの相互認証と、異地ローンの簡便化が明文で義務付けられました。

日系企業が直面する罰則リスクとは?

今回の改正で最も注意すべきは、罰則の大幅な引き上げです。

従来、積立金の登記・口座開設を怠った場合の罰金は最大5万元(1万元以上5万元以下)でした。改正後はこれが5万元以上30万元以下(最大約600万円)へと、上限が6倍に跳ね上がっています。しかも「1件あたり」の罰金であるため、複数従業員の口座が未開設だった場合、罰金が累積して数百万円規模になるリスクがあります。

さらに、不正な引き出しには3年間の引き出し・貸付禁止、不正なローン利用には5年間の利用禁止という行政制裁も新設されました。

登記・口座開設の期限管理の甘さ

条例は会社設立から30日以内の登記、登記から20日以内の従業員口座開設を求めています。ある日系メーカー様では、駐在員の交代タイミングで後任の口座開設が3カ月以上放置されており、管轄センターから是正勧告を受けたケースがありました。改正前なら最大5万元の罰金で済んだものが、今後は最大30万元になります。

拠出率の地域差への未対応

拠出率は「前年度平均月給の5%以上」と下限が定められていますが、上限は地方政府が決定します(多くの都市で8〜12%)。以前、複数都市に拠点を持つ日系企業様が本社で一律8%と設定していたところ、ある都市では下限が10%に引き上げられていたことに気づかず、過少拠出を指摘された事例もありました。

給与支払い後5日以内の送金義務への再対応

給与支払い後5日以内に積立金を送金する義務は、実は改正前の条例(第19条)にも定められていた既存ルールです。ただし、今回の改正で罰則が大幅に強化されたことにより、このルールへの執行姿勢も厳格化が見込まれます。月末締め・翌月払いの給与体系を取る日系企業では、送金タイミングの見直しが急務です。

企業が今すぐ取るべき対応とは?

9月20日の施行を前に、以下の対応を優先的に進めてください。

1. 登記・口座の棚卸し

全拠点・全従業員について、積立金の登記状況と口座開設状況を確認してください。特に2024年以降に採用した従業員や、拠点を新設した都市の手続き漏れがないかを重点的にチェックすることをお勧めします。

2. 拠出率の再確認

各拠点所在地の最新の拠出率上限・下限を管轄の住宅積立金管理センターに照会し、現行の拠出率が適法かどうかを検証してください。特に2025年以降に拠出率の調整を行った都市(上海、深圳など)は要注意です。

3. 給与計算フローの点検

給与支払い後5日以内の送金義務に対応できるよう、経理部門・人事部門の業務フローとシステム設定を確認してください。ERPや給与ソフトの送金スケジュール設定が期限に合致しているかの検証が必要です。

4. 従業員への周知

引き出し事由の拡大(リフォーム、管理費)について、従業員向けに情報を発信してください。福利厚生の一環として制度の活用を促すことは、従業員満足度の向上にもつながります。

まとめ

従業員にとって使い勝手が向上する今回の改正ですが、企業側にとっては手続きの遅延が直接的な高額罰金につながるなど、実務面でのリスクがかつてなく高まっています。外商投資企業(日系企業を含む)も明確に適用対象であり、「うちは外資だから大丈夫」という認識は通用しません。

東京コンサルティンググループでは、中国各都市における住宅積立金の登記・拠出率の適法性チェック、給与計算フローの見直し支援、従業員説明資料の作成まで、ワンストップでサポートしております。改正対応にご不安のある企業様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 改正住宅積立金管理条例はいつから施行されますか?

2026年9月20日から施行されます(国務院令第844号、2026年8月18日公布)。

Q2. 外資系企業(日系企業)も対象ですか?

はい。改正条例は外商投資企業および城鎮私営企業にも明確に適用されます。

Q3. 登記・口座開設を怠った場合の罰金はいくらですか?

改正前は1万元以上5万元以下でしたが、改正後は5万元以上30万元以下(日本円で約100万〜600万円)に大幅に引き上げられました。

Q4. 拠出率は何%ですか?

下限は前年度平均月給の5%です。上限は地方政府が決定し、都市によって8〜12%の範囲で異なります。

Q5. 従業員が積立金を引き出せる用途は何ですか?

住宅購入、ローン返済、リフォーム(装修)、管理費(物業費)の支払い、家賃支払い、退職・重度障害・海外移住などが対象です。

皆様からのご連絡をお待ちしております。

東京コンサルティングファーム 中国拠点
小林 祐介