M&A に関する法律・規制 |トルコ進出コンサルティング
トルコにおけるM&A に関する法律・規制
2011年6月総選挙において大勝を果たした公正発展党(AKP)のエルドアン政権(当時)は構造改革路線を支持し、外資の誘致を拡大しました。たとえば、新外国直接投資法により、内外投資家の無差別・同等待遇の保証がされました。以下、個別項目において詳述します。
2014年8月エルドアン氏の大統領就任に伴い、今後、新たにEUに準拠した法整備が行われる可能性があります。
投資規制
企業誘致促進エージェンシー(ISPAT:Investment Supportand Promotion Agency of Turkey)は投資促進サポートを行っており、新外国直接投資法の導入により、会社設立手続の簡素化、審査承認制から届出制への変更、手続期間の短縮、紛争解決の際の国際調停機関の介在保証など、外資に対する投資環境は改善しました。
さらに、2012年7月から施行されたトルコ商法の内容も海外投資家にとって参入しやすい投資環境を整備するものとなりました。
ただし、以下のように、自国産業を保護する目的で外資に対し規制を定めているものもあります。
■規制業種・禁止業種
原則すべての業種において外資の参入を認めていますが、以下の業種については、規制・禁止の対象となっているため留意が必要です。
- ・放送メディア分野における最大外資比率は50%。既に放送メディアの共同出資者である外国投資家は、他の民間企業の株式を追加保有することは不可
- ・民間航空、国内海運、港湾業務、大学以外の教育施設では外資比率は最大49%に制限
- ・空港管理部門は民間資本投入に関する制限はないが、トルコ軍からの認可交付が必要
- ・直接的な石油事業への投資を行おうとする外国企業には、石油法12条に基づく条件が適用
- ・ヨットハーバー管理部門の事業は、海事庁の承認と文化観光省の文書があれば外資比率100%でも可(観光事業の奨励に関する法律第2676号)
- ・鉄道輸送インフラ部門は、トルコ国有鉄道協会のみの特権であり、外資参入は不可
- ・漁業(生産除く)は外資参入は不可
■CEマーキング制度
トルコでは、通関時にトルコ規格院(TSE:Türk Standardlari Enstitüsü)による検査・承認が義務付けられています。同じ製品でも輸入するたびに検査を必要とし、輸入業者の負担となっています。CE(欧州基準)マーキングは、原則としてEU域内向けに販売される指定の製品に貼付(該当製品の製造業者もしくは輸入者または第三者認証機関が所定の適合性評価を行い、製品、包装、添付文書に付与)を義務付けられる基準適合マークです。トルコでのCEマーキング制度はEU基準と同等には確立していないため、突然の輸入規制を通達されることがあります。たとえば、以前はCEマークが不要であったものが事前通告なしにCEマーク取得を必要とされ、予定どおりにトルコ向けに輸出ができなくなる場合があります。
トルコ商法
トルコ商法とは日本でいう会社法に相当します。2012年7月1日より施行されたトルコ商法はEU標準や世界貿易組織の要件に一致するように修正されました。これにより、以下のような外国資本の直接規制において自由主義原則奨励が適用されました。
- ・外国資本の企業は同じ営業内容、同じ条件下の国内企業と同等の権利や免除および他の便益を持つ
- ・最低資本金5万USドルを廃止
- ・外国資本の企業は国内企業と同じプロセスでの資本増強や定款の修正、総会への株主代議制度を適用
また、以下の事項が変更となりました。
- ・合併や分離等の組織再編の法的フレームワークが税法に代わり、商法が担う
- ・存続会社の資産や債務の別会社への所有権移転や流動化の容認
- ・少数株主の権利の明確化
- ・10%以下の株式保有制限の設定
■合併
合併の形態には、吸収合併(ある会社が他のある会社に吸収される)、および新設合併(新しく1つの会社が複数の会社の連合の下にできあがる)の2つがあります(トルコ商法136条)。
吸収合併は、譲受側の株主の保護、公開会社の新株発行および資本金分配に関する規制の適用外と規定されています(142条)。 一方、新設合併は、資本金分配に関する条項および最低株主数の条項の適用外と規定されています(143条)。
合併に関与する本社、支社は資本市場委員会に30日以内に合併契約、合併の報告、監査報告書、過去3年間の期末と中間の財務諸表を併せて通知しなければなりません。同時に、30日以内にウェブサイト上で株主や一般(株主以外)向けのページを作成することが義務付けられています。
また、商業登記官報(Trade Registry Gazette)の広告欄での通知や新聞の資本動向欄においても閲覧できるように3営業日以内に整えておきます。なお、全株主の賛同が得られた場合、中小企業は上記のプロセスは省くことができます(149条)。
合併は同じ形態の会社間においてのみ行うことができます。株式会社同士、有限会社同士の合併は可能ですが、株式会社と有限会社間の合併は成立しません。
合併契約書に署名後6カ月以上経過した場合、または合併参加企業の資産に重大な変化が生じた場合、実地棚卸は不要ですが、合併参加企業は中間貸借対照表を提示しなくてはなりません。減価償却、評価調整勘定および条項、評価方法の変更など重大な項目に関しては前期末の貸借対照表の勘定を修正して期首に反映させる必要があります(144条)。
資本市場法
資本市場法とは日本の金融商品取引法に相当します。2012年12月30日に新しく資本市場法(法律第6362号)が施行されました。旧法との主な違いとして、市場操作による情報に関して罰則を適用される行為が詳細に明記されました。トルコの証券市場を規制、監督する機関である資本市場委員会により原理原則が整備され、投資家の権利、権益が保護されています。
上場企業における自社株式の取得および条件面の枠組みは資本市場委員会の承認ならびに決議により実行に移されます。連結貸借対照表に含まれる関連会社の株式取得の場合も同様です(資本市場法22条)。
公開買付規制
公開会社の株式を取得する際、買収の対象企業が公開会社であり、当該公開会社の50%以上の議決権や、取締役会において多数派を指名できるだけの種類株式を取得する場合には、原則として公開買付が義務付けられています(資本市場法26条)。
■インサイダー取引規制
インサイダー取引とは、公表される前に投資価値に影響を与える情報を利用して、個人または第三者機関が利益を得て、損失を防ぐための行為です。投資家に平等であるべき機会の損失をもたらすこと(資本市場法106条)と定義されています。インサイダー取引は資本市場において、改ざんとして位置付けられる犯罪の1つです。しかしながら、改ざんとインサイダー取引には明確な違いがあります。改ざんは投資対象の価値を変化させるものです。一方、インサイダー取引は、結果的に価値が変わるか変わらないかにかかわらず、情報を利用した時点で訴追される犯罪です。それゆえに証明することが困難であり、トルコでは他国ほど多くはありません。
競争保護法
競争保護法は日本の独占禁止法に相当します。製品やサービスの市場発展や形成を保証する法律です。当該法律は、トルコ公正取引委員会が管轄となっており、公式文書(Communique)にて吸収戦略の規制や、取引の境界線、届出手順やタイミングなどを設定しています。 市場における競争を阻害し、その結果、合併当事者の市場地位が好転または強化される場合は違法であり、禁止されます(競争保護法7条)。
また、以下のいずれかに該当する合併等は、事前に委員会に届出なければなりません(10条)。
- ・合併等を行う事業者のマーケットシェア合計が25%を超える場合
- ・合併等を行う事業者の売上高合計が25兆トルコリラ以上になる場合
届出の際に不完全もしくは虚偽の報告をした場合、または事前の届出を怠った場合は62億トルコリラの制裁金の対象となります。また、当該関係者は合併後の事業者の総資産の0.2%を手数料として競争庁に支払わなければなりません。禁止される合併について、委員会は、制裁金を科すとともに当該合併ないし買収に関する業務を終結させ、非合法に行われたすべての事項を回復させ、委員会が定めた条件および期間内に資産および株式を以前の保有者に戻す決定を下します。
株式を以前の保有者に戻すことが困難であれば、第三者に委託するか、または当該合併に関与しない第三者に譲渡するか、またはその他の適切な処置を行う決定を下します。
現地 会計基準
2013年1月1日以降トルコ商法の施行により、国際会計基準の導入が規定されました。まず、財務諸表はトルコの会計基準委員会(TMSK:Turkish Muhasebeve Denetim Standartlar Kurumu)が制定する、トルコの会計基準(TAS:Turkish Accounting Standards)に従って作成します。TASは国際財務報告基準(IFRS)に準拠しています。
また、連結財務諸表を作成する場合や連結の有無の決定についてもTASが基準となります。TASは2013年1月1日に施行されたもので、2013年より事業年度の貸借対照表の期首残高はTASに準拠して評価されなければならなくなりました。経過措置として大会社のみが適用対象となっておりますが、今後対象範囲が広がる可能性が高いと考えられます。
なお、トルコの会計期間は、基本的には1月1日~12月31日であり、課税期間も会計期間と同じ暦年となっています。ただし、外国企業の場合、財務省の許可のもとで異なる会計期間とすることが可能であるため、会計期間を4月から翌年3月までとすることもできます。
新外国直接投資法
2003年6月に、外国直接投資法は49年ぶりに改正されました。旧法と新法の主な違いは以下のとおりです。
- ・外資による会社設立手続が審査・承認制から届出制に変更
- ・手続のワンストップ化が図られ、手続期間が2カ月半から1日に短縮
- ・紛争処理への国際調停機関の介在を法的に保証
- ・投資申請への最低自己資本5万USドルの拠出条件の廃止
トルコ法人の株式10%以上あるいは経営上の議決権を取得した非居住者の投資家は、取得後1カ月以内に外国投資局への報告が義務付けられています。ただし、現金資本はトルコ商法の規定に基づき評価されます。外国直接投資か否かは、以下の経営資源への投資を通じて判断されます。
- ・トルコ中央銀行により売買される兌換通貨での現金資本
- ・外国に所在する企業の株式や社債(国債は除く)
- ・機械や設備
- ・工業ならびに知的財産権
- ・再投資収益、利益、金融債権、その他投資に関する財産的価値
- ・天然資源の調査、採取に関する商権
また、内外投資家を無差別または同等に待遇するとの規定が置かれ、特に以下の点で外国人投資家の参入が容易となっています。
- ・利益・配当金などに関する国外送金の自由化
- ・外国に所在する企業の株券ならびに債権は外国投資家の外国投資分と認める
- ・公共目的のため、または正当な法手続による補償の場合を除き、外資は没収または国有化されない
- ・トルコ国民と同等の不動産取得の自由化
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