M&Aに関する税務 |ロシア進出コンサルティング
M&Aに関する税務
M&A に関する税務
ロシアでM&Aを行う場合、税務上のリスクが伴います。ロシアにおける行き過ぎた節税による簿外債務の累積的な影響額を計算すると、純資産を超えてしまうケースが見受けられます。この影響は、投資対象の会社だけでなく、取引先、得意先にも及ぶ可能性があり、その結果、信用性の高い取引先が突如として倒産してしまう場合もあります。そのため、ロシアでは税務調査が頻繁に行われ、当局から脱税とみなされた場合、重い罰金が科されます。
なお、ロシアでのM&Aは株式取引と資産取引で構成されています。株式取引は、法人税のみ還付の対象となり、資産取引は基本的に、付加価値税(VAT)と法人税が還付の対象です。一般的に、株式取引の手続の方が、資産取引に比べて容易です。
株式取引の場合、被買収企業のすべての権利義務(過去の税金負債も含む)は買収企業が引継ぎます。主に、ライセンスや引継ぎの問題などを回避したい場合、税務上の繰越欠損金をそのまま引継ぎたい場合などに利用されますが、独占禁止法に抵触していないかどうか留意しなければなりません。
資産取引の場合、負債は資産譲渡側企業に残り、取引される資産のみが譲受側企業に移ります。ただし、企業を複合資産(事業)として取得する場合は該当しません。ロシアにおいて、これは稀なケースですが、倒産した企業が事業を売却する際に用いられることが多く、資産に加えて過去の税金負債なども取得企業に移行することになります。
■株式取得
- [税務上のメリット]
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- 外国法人は、ロシアにある不動産が資産の50%未満であれば、株式売却によるキャピタル・ゲインが非課税となる
- 株式の売買はVATの対象とならない。
- ターゲット企業が持つ繰延税金資産を引継ぐことができる。
- [税務上のデメリット]
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- 税金債務を引継がなければならない。
- 税務上、のれんの償却は認められていない。
- 株式売却のキャピタル・ゲインに対しては、内国法人もしくはロシアに居住する各個人に所得税が課される(課税率は、法人20%、個人13%)。
- [税務リスクの保証]
- 株式取得において、取得企業はターゲット企業のすべての資産と債務(偶発債務を含む)を引継ぎます。過去の税金債務についても、すべて引受けることになります。そこで、買収企業はターゲット企業から未払税金債務に関する適切な保証を得るため、ターゲット企業に、税務当局から株式取引日以前で最新の勘定調整表と個人口座表の入手を要求することがあります。ただし、これらの書類によって未払税金債務がないことが証明されたとしても、潜在的に税務当局が課税額について指摘をしたり、追徴税や罰金を科したりする可能性を除外することはできないため注意が必要です。 税務リスクへの対応策の1つとして税務監査時に作成されるレポートの確認があります。また、潜在的な税務リスクを軽減するために、買収企業はデュー・デリジェンスを行い、株式取得契約の中に、表明・保証に関する条項を付す方法も考えられます。
- [税務上の欠損金]
- 被取得企業の損失は、発生した翌年度から10年間繰越して税務上損金算入できます。企業再編において、再編される企業(被取得企業)のすべての権利義務を取得する企業は、被取得企業の損失で、課税所得を減額することができます。 ロシア政府は、M&Aにおける繰越損失金の制限を設ける方針を示しているため注意が必要です。
- [地方税]
- 有価証券(株式、社債)発行の届出に対して、額面価格の0.2%かつ10万ルーブルを超えない額が、取得企業に地方税として課されます。
■資産取得
- [税務上のメリット]
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- 取得した資産は税務上、償却できる。
- ターゲット企業の税金債務を引継ぐ必要がない。
- [税務上のデメリット]
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- 資産の売買はVATの対象となり、取得側が負担する可能性がある。ただし、取得側の事業がVAT免除であれば、インプットVATは資産化することができる。
- 市場価値が高く、税務上の価値が低い資産が売却された場合、利益税の対象となる。
- 繰延税金資産は引継ぐことができない。
- 売却損はすぐに全額損金参入することはできない。耐用年数期間で均等に損金認識される。
- [現物出資]
- 外国企業がロシアの事業の資産を取得する場合、その外国企業が直接取得するケースと、その外国企業の支社を通して取得するケースがあります。
取得した資産は、買収側外国企業のロシア子会社の資本として現物出資されることがあります。株式会社へ現物出資をする場合、法律に別段の規定がない限りは、ロシアの独立鑑定人による評価が必要となります。また、有限責任会社へ現物出資をする場合も、出資する現物の額面価格が2万ルーブルを超えていれば、独立鑑定人による評価が必要になります。
また、特別目的会社を設立して、ターゲット企業の資産を取得する方法もあります。 - [取得価格]
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一般的に、取得価格は買い手と売り手の合意によって決定されます。しかし、資産取引については、税務当局が移転価格税制に従って、適応する価格を決定します。ロシア税法の下では、税務当局は次の4つの取引について、価格を再計算する権利を持っています。
- 関連当事者間取引
- 現物取引
- クロスボーダー取引
- 納税企業によって決められた取引価格が、類似する取引と比べて少なくとも20%以上の差がある取引
上記の取引が市場価格と比べて20%以上の差があれば、税務当局が取引価格を決定し、利益税、VAT、支払遅延利息を再計算することができます。
- [のれん]
- 企業を複合資産(事業)として取得する場合に、取得価格と純帳簿価格との差がのれんとなります。純帳簿価格に対して、取得価格が上回っていれば正ののれん、下回っていれば負ののれんとなります。
税務上、正ののれんは、複合資産移転の届出月の翌月から5年以内に償却されます(損金算入)。会計上は、20年もしくは企業解散までの年月のいずれか短い期間で償却されます。負ののれんは、複合資産の移転を届出た月に、利益税の課税所得となります。
複合資産を譲渡する側の企業は、税務上、資産の売却損を損金算入することができます。 - [付加価値税]
- ほとんどの資産取引は、18%のVATの対象となります。ロシアにおいて、海外企業が資産を直接取得し、事業に使用する場合(取得資産を現物出資としてロシア子会社に出資するような場合)、しかもその企業が税務目的の登録をしていない場合は、インプットVAT(仮払VAT、仕入VAT)は取得企業が負担します。その資産が取得企業のロシア子会社によって取得された場合、そのインプットVATはロシア子会社のアウトプットVAT(仮受VAT、売上VAT)と相殺できる可能性があります。
ロシアにおいて、ロシア企業への現物出資はVATの対象とはなりません。ただし、現物出資を行うロシア子会社は、資産取得時に相殺したVATを復活させる必要があります(固定資産で純帳簿価格の場合)。復活したVATは、移転書類に分けて表示する必要があり、現物出資を受けた企業のアウトプットVATと相殺することができます。
複合資産(事業)の取引については、特定のVAT規定の対象となります。たとえば、取得価格と純帳簿価格に差がある場合、課税基準は会計上の純帳簿価格に特別な比率を掛けたものとなります。取得価格が純帳簿価格よりも低い場合、掛率は、純帳簿価格に対する取得価格の割合によって決定されます。取得価格が純帳簿価格より高い場合も、掛率は同じように算出されますが、分母と分子の割合は、売掛金と有価証券の価値によって減らされます。複合資産(事業)を譲渡する企業は取得企業に対して、資産の種類ごとに分類された棚卸資産レポートと包括的なインボイスを提供します。 - [地方税]
- 複合資産(事業)の権利、譲渡契約、権利の制限や義務の届出に対して、資産価値の0.1%が地方税として取得企業に課税されます。しかし6万ルーブルを超えない額の地方税、また不動産の権利、譲渡契約、権利の制限や義務の届出に対しては1万5,000ルーブルの地方税(法人)が課されます。土地や土地にかかわる債務の取引にも地方税が課されますが、ほとんどの場合、その金額はそれほど多くありません。
■ 税法の解釈
納税者は、税務当局からロシア税法の解釈をまとめた資料を入手することができます。正しく解釈できれば、税法当局からの指摘による罰金や遅延利息の支払を回避することができます。ただし、納税者側が税務当局に提出する情報に不足がある場合は、その例に当てはまらないため注意が必要です。
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