
皆さん、こんにちは。東京税理士法人です。
いつもブログをお読みいただきありがとうございます。
さて、今回は「人手不足と経理」についてお話していこうと思います。
目次
それは本当に「人手不足」なのか?
「経理が回らない」。
担当者が退職した。募集を出しても応募が来ない。ようやく採用できても、現場は思ったほど楽にならない。そしてしばらくすると、また疲弊する。
この循環を経験している経営者は少なくありません。確かに労働市場は厳しくなっています。しかし、経理だけが慢性的に回らない企業には、ある共通点があります。それは「人が足りない」のではなく、「構造が整理されていない」ということです。
経理の人手不足は原因ではなく結果です。業務が積み上がり、役割が曖昧になり、属人化が進んだ末に表面化する症状なのです。
なぜ一人辞めると崩れるのか
経理の仕事は仕訳入力だけではありません。月次決算、資金管理、税理士対応、銀行対応、管理資料の作成など、会社の数字を扱うあらゆる業務が集まっています。本来は経営に最も近い部門の一つです。
しかし、「どこまでが経理の役割なのか」「どの水準までを期待するのか」が明確になっていないまま業務が広がっていくと、処理業務と判断業務、さらには分析業務までが混在します。その結果、一人に過度な負担がかかります。
さらに、判断基準が担当者の頭の中にしかない状態では、辞めた瞬間に業務が止まります。人が辞めること自体は自然なことです。辞めた瞬間に崩れる体制こそが問題であり、それは採用の問題ではなく設計の問題です。
業務はなぜ減らないのか
インボイス制度、電子帳簿保存法、クラウド会計の導入など、経理を取り巻く環境は大きく変わりました。どれも必要な対応です。しかし多くの企業では、新しい業務を追加する一方で、既存業務の見直しが行われていません。
その結果、業務は減らずに増え続け、「忙しい」という感覚だけが残ります。何に時間を使っているのかが見えないまま、人だけを増やそうとする。これでは根本的な解決にはなりません。
さらに、毎月作っている資料が実際に経営判断に活かされていないケースもあります。目的が曖昧な業務が積み重なれば、いくら人を増やしても負担は軽減しません。問題は業務量ではなく、全体設計の不在です。
経理の疲弊は、経営の質を下げる
経理が回らない状態は、単なるバックオフィスの問題ではありません。月次決算が遅れれば、数字は過去の報告になります。本来は未来の意思決定に活かすべき情報が、単なる確認資料に変わってしまいます。
資金管理も同様です。資金繰りは残高確認ではなく、投資余力を測り、成長戦略と結びつけるための機能です。ここが曖昧であれば、攻めるべき局面で踏み出せません。
経理の慢性的な疲弊は、静かに経営のスピードを奪います。そして経営判断の質を下げていきます。
解決の起点は「再設計」にある
多くの経営者は「あと一人いれば」と考えます。しかし本質は人数ではありません。必要なのは業務の再設計です。
日々の反復処理、判断を伴う会計業務、経営に接続する分析業務を分解し、それぞれの目的を明確にする。処理は標準化し、判断は共有し、分析は経営と接続させる。こうした整理があって初めて、人数の議論が意味を持ちます。
AIや自動化が進む時代において、記帳や申告はますますコモディティ化しています。だからこそ、経理を単なる処理部門で終わらせず、経営基盤として再設計できるかどうかが重要になります。
経理の人手不足は、単なる採用難ではありません。構造を見直す契機です。変えられないのは労働市場ですが、変えられるのは体制です。
経理が整えば、数字は議論を生み、資金は戦略と結びつき、経営は強くなります。そのためには、数字づくりだけを担う存在ではなく、経営と数字をつなぐ視点が必要です。
経理を処理部門で終わらせるのか、それとも経営を支える基盤へと引き上げるのか。
その選択が、これからの企業の競争力を左右します。
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