合弁契約書

タイにおいては、外国人事業法により外資マジョリティでの進出を規制されている業種が多くあり、日系企業においても合弁で進出しているケースが多いです。合弁での進出の場合の多くは、タイの合弁先と合弁契約書を締結することになりますが、進出後、事業がうまくいっている間はこの合弁契約書を見直す機会などはあまりありません。しかし、こと会社の清算時(合弁契約解消時)には、合弁契約書を精査する必要が出てきて、その際に思ってもみなかった落とし穴が見つかるものです。これは、進出時に最悪のケースまで想定し、先の清算(契約解消)に至るまでの考察・協議が足りていなかったことが原因となります。

合弁契約書には、双方の義務内容の明確性が求められ、紛争解決の方法(裁判管轄・仲裁地・準拠法等)を含め、契約解除方法・合併解消の基準についても明確に定めておく必要があります。特に外資規制によりタイ側資本がマジョリティとなるケースが多いので、進出前から慎重に準備するべきです。

使用言語は、日タイ合弁の場合、英語で作成するケースが多いですが、これは、日本企業、タイ企業の双方が理解できる言語を使用する意図があります。しかし、往々にして解釈の違いが生じやすいので、最初の段階で、法律専門家を交え協議・相互理解に努める必要があります。

合弁契約書では、合弁当事者が保有する株式の譲渡を希望する場合、まず他の合弁当事者に優先的に買い取りの権利を与えるのが一般的ですが、その際に譲渡金額について額面での譲渡と記載している場合があります。しかし、タイにおける株式譲渡については、市場価格を下回った価格での株式譲渡については、譲渡価格と市場価格との差額に対して税務当局から課税を主張されるケースがありますので、合弁契約書に鑑定評価会社の鑑定に基づく価額で譲渡する旨を規定し、鑑定評価会社の選定方法・手順について詳細に規定するほうが良いでしょう。

ここで注意する必要があるのが、上記の方法で保有株式を譲渡しただけでは合弁契約の義務から解放されたわけではないということです。合弁契約は契約解除(もしくは契約期間の満了)しない限り契約当事者は拘束されます。よって、合弁契約書には合弁当事者が株式を全て譲渡した場合には、合弁契約の当事者から除かれる(もしくは契約解除)旨を規定するほうが良いと思います。

上記のように、合弁契約書は、あくまで企業双方の個別契約であり、契約当事者しか拘束しないことに注意が必要です。一方、付属定款においては会社法上の規則ににより会社の行為を規律しているので、会社の行為に対しては、合弁契約書と付属定款との間で相違があった場合、付属定款が優先されます。合弁契約書の契約不履行があった場合は、あくまで損害賠償の問題です。その為、合弁契約書を作成する場合は、合弁契約書で規定した内容をそのまま付属定款に規定されることをお勧めします。しかし、付属定款に規定できない内容も含まれることが想定されるため、法律専門家にレビューしてもらいましょう。ここで、付属定款はタイ語で作成する必要があるため、少なくとも英訳して、何が書いてあるか事前に把握することが大事ですね。

Thailand駐在 小林 平悟

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2019-10-23

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