英語?教えて!シンガポールのビジネス契約書!

法務

 

中国系、マレー系、インド系に諸外国の人々がまじりあって生活するシンガポール、公用語は英語を含めて4か国ですが、契約書は英語で締結されることがほとんどです。

日系の会社同士でも、シンガポールでビジネスをする場合は英語で契約書を締結することが多いもの。
言語の違いは文化の違いですから、日本語の契約書の直訳ではうまくいきません。

今回は、シンガポール、ひいては国際ビジネスで契約書を作成する場合の注意点を見ていきましょう。

 

そもそも言語の縛りはあるの?

本題の前に、上の序文に疑問を持たれた方のために一言。

実は、シンガポールの法律には、英語を使って契約書を締結しないといけないというルールは存在しません。

むしろ、シンガポールの契約書には、一般条項(Miscellaneous)の中に契約言語を定める条項があったり、準拠法(Governing Law)や合意管轄(Jurisdiction)を定める条項に盛り込まれることが一般的です。

日系の企業同士が、係争が発生した時の合意管轄を日本の裁判所に指定するような場合は、日本の法律に従ってすべての文書を日本語で提出する必要がありますので、日本語の方がいいことになります。

また、特に雇用契約など個人がかかわる契約に関しては、雇用法などで「両当事者が理解できる言語で記載すること」とされているため、英語を理解できない従業員については、日本語で契約書を締結すべきである場合もあります。

 

しかし、シンガポールで法人格を持つ企業についていえば、英語を理解できないなどということはシンガポールの法体系全体を無視することになり、認められません。

準拠法や合意管轄についても、ビジネスの係争に関わる法的制度が整った、シンガポールや香港を指定する場合がほとんどですので、日系企業同士であっても、英語を母語をする話者のいない企業同士であっても、シンガポールで契約書を締結する場合は英語を契約言語にすることになります。

本稿も、シンガポールで締結される英文契約書の慣習について、述べていきます。

どうして日本の契約書の英訳じゃダメなの?そこに違いがあるからです!

シンガポールはイギリスの法体系を踏襲しています。
これは、コモン・ロー(Common Law)と呼ばれる法体系で、日本の採用する制定法(Civil Law)とは相いれない考え方が含まれます。

 

例えば、日本の場合、契約書はお互いが合意した内容を確認し、違反のないようにするという側面が強く、詳細まで細かに規定しなくても契約が履行されるという考え方があります。
したがって内容は簡素にし、「本契約書に規定のない事項は信義誠実の原則に従い双方協議の上定めるものとする」などとすることが多いかと思います。

一方、シンガポール(英・米・豪に同じ)では、契約書はそれまでの協議・交渉の結晶として練り上げられるものであり、詳細に関してをれ以上自己主張する余地をなくすため締結されるという考えに立っています。
したがって、契約書が締結されれば、それまでの口頭での合意などは一切無効となります(=口頭証拠排除原則、Parol Evidence Rule)し、事後も契約書外に合意がなされる余地を残してはいけません。
こうした内容を「完全合意(Integrity)」として条項に含むこともあります。

したがって、日本の契約書を英訳すると、シンガポールでは受け入れられない文言が多数発生してしまい、調印に至らないケースが増えてしまうのです。

 

どんな条項を網羅すればいいの?

ビジネスで取り交わす業務契約書(Service Agreement)について、一般的に含まれる必要のある項目を見ていきましょう。

・用語の定義(Definitions)
・業務の内容(Scope and Nature of Service)
・報酬の条件(Terms of Remuneration)
・顧客の義務(Client’s Obligation)
・業務上の費用(Provider’s Expenses)
・補償(Indemnity)
・知的財産及び機密情報(Intellectual Property and Confidentiality)
・利益相反(Conflict of Interest)
・不可抗力(Force Majeure)
・契約解除(Termination)
・合意管轄(Jurisdiction)

 

この中で、日本の契約書と大きく異なるのは、最初の「用語の定義」と、「補償」と訳される「Indemnity」ではないでしょうか。

前者の「Definitions」は、言葉の使い方を明確にするためであり、「Day」と数えたら営業日ではなくてカレンダーの上での「一日」だとか、「Service」と言うのは項目として契約書内に羅列したものだけをさす、といった具合に規定し、曲解されないように設定する必要があります。

後者の「Indemnity」は、サービス・製品の受け取り手である顧客が、それを用いた結果として損失を被ったような場合に、提供者側が賠償を行う、という内容ですが、通常そうした係争のための弁護士費用までも提供者側が補償するなど、比較的大きな金額を生じさせるものであるため、交渉の上で限度額を定めるなど、工夫が必要になります。

 

いずれにせよ、海外企業とのビジネス、現地の商習慣を理解したうえでの契約の締結が必要になりますので、専門家を自社で抱えているのでなければ、法律的な相談を行うことが無難と言えます。

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