監査、AGM、税務申告…シンガポールの決算って、すごい大変なんだって?

法人税が割安(17%)でインフラが整い、ASEAN周辺国へのアクセスも容易でとにかくビジネスハブとして大活躍するシンガポールですが、いざ会社を作ったら、その管理はなかなか大変です。

 

日本と違うルールとして、シンガポールの会社の維持には以下のような手続きが必要です:

1.会社秘書役維持(ペーパーカンパニーなら取締役名義借りや登録住所借りの費用も発生)

2.年次株主総会(AGM)開催

3.監査済財務報告書(FS)準備

4.年次報告書(AR)提出

 

今回は、期限を守ることの難しい年次決算に焦点を当てつつ、そんなシンガポールのコンプライアンスを見ていきましょう。

 

会社秘書役維持

 

ペーパーカンパニーを含め、シンガポール登記のすべての会社は会社秘書役の任命が必要です。

 

こちらは、法的なコンプライアンスを履行する重要な役目を負うために、素人には代われない専門的な業務を行うもので、サービスフィーは必ず発生します(S$ 1,800程度)。

 

決算の業務においても、秘書役の業務は多く、株主が企業である場合の処理(XBRLフォーマット)やAGMの書類処理はすべて会社秘書役により行われます(書類処理費用:S$ 600程度)。

 

AGM開催

 

株主たる親会社の取締役がシンガポールにいないことが多いため、紙の上だけの形式的な株主総会になることの多いAGMは、その分署名済み書類の原本を郵送したり、形式的に株主の招集に2週間待つ必要があったりと、意外に時間を取られます。

 

このAGMは法律上、会計年度末から6か月以内に行われる必要がありますので、上記法定監査も含めて、できるだけ早く始めることが重要となります。

 

遅延のペナルティーはS$300となります。

 

監査済FS準備

 

日本ではごく一部の大企業しか対象にならない監査ですが、シンガポールでは原則すべての会社が法定監査の対象となります。

 

費用はどれだけ安いところでもS$4,000近く取られ、手続きは煩雑を極めます。

 

前年度分の会計資料をすべて保管し、それに基づいてきっちりとGL(総勘定元帳)を書き込んだ会計帳簿を設けている必要があるため、毎月の業務も軽視できません。

 

監査報告書は最初ドラフトが作成され、数字について問題がないか会社側の確認署名を経たうえで、最後CPA(公認会計士)の確認署名が行われます。

 

諸々書類のやり取りや取引内容の確認を行うため、どれだけ早くともひと月はかかります。さらに、絶対的に監査法人の数が足りていないために、監査作業自体が時間を要し、最初の依頼(Engagement Letterへの署名)からゆうに数か月かかることも珍しくありません。

 

この監査済み財務報告書がAGMに提出されることが会社法上の必要事項とされており、監査なしでAGMを開催することも不可能ではありませんが、コンプライアンス違反と見なされます。

 

遅延のペナルティーはS$300となります。

 

AR申告

 

シンガポールのAR申告は、上記AGMから60日以内(※シンガポール国内資本100%の場合は30日以内)に行う必要があります。

 

AGMのタイムラインに沿って期限が設定されているため、単体で遅延するリスクは高くありませんが、このAR申告期限に間に合わないことでも、S$300のペナルティーが発生します。

 

つまり、最初に対応が必要な法定監査が遅れてしまった場合には、合計S$900がペナルティーとして徴収されることになります。意識して早めに行動することが必要です。

 

遅れそうな場合には?

 

ペナルティーのリスクばかりで恐ろしい年次業務、一つだけ与えられた救済策として、上記AGM開催、FS提出、AR申告の期間をそれぞれ最大2か月まで延長することができます。

 

延長にかかる費用は2か月でS$400です。

 

監査役や秘書役と相談しながら、ペナルティーのリスク回避のために必要であれば、延長しておくのも一つの方法です。

 

 

法務に関するお問い合わせはもちろん、労務や会計に関するお問い合わせも、お待ちしております。

以下のリンクから、お気軽にご相談ください。

 

【問い合わせ先】

東京コンサルティングファーム

シンガポール法人

近藤貴政

kondo.takamasa@tokyoconsultinggroup.com

+65-6632-3589

http://www.kuno-cpa.co.jp/form/

※)記載しました内容は、作成時点で得られる情報をもとに、最新の注意を払って作成しておりますが、その内容の正確性及び安全性を保障するものではありません。該当情報に基づいて被ったいかなる損害についても、情報提供者及び当社(株式会社東京コンサルティングファーム並びにTokyo Consulting Firm Co., Pte. Ltd.)は一切の責任を負いません。ご了承ください。

関連記事

ページ上部へ戻る