シンガポール法人の事業内容の仕組み

その他

会社法に従って事業を会社として登記し、その活動内容を報告するのはシンガポールでも日本でも共通の一般的なコンプライアンスです。

しかし、シンガポールの登記簿、BizFileに書かれる事業内容、Principal Activitiesは、日本のそれと大きく異なります。

今回はそんな事業内容の仕組みを少し詳しくお伝えします。

何が違うの?

日本では、会社のホームページにも、法務省の補完する登記簿にも、非常に多くの事業内容が書かれることがありますが、シンガポールは必ず一つか二つと決まっています。

これは下記に見る通り、事業内容自体の考え方が基本的に異なるためですが、結果として以下の事態が生じます:

  • 登記上事業内容として記載していない活動でも行って構わない
  • 登記上事業内容として記載している活動を必ずしも行わなければならないわけではない

このように書くと、そもそも事業内容を決める意味がまるでないように思えますが、実際には外面的に、どのようなビジネスを行っているか明示するために存在していると理解することができます。

また、シンガポールが極めて規制の少ない国であるとしても、法的にどのような事業でも行っていいというわけではなく、特定の事業については各省庁がライセンスを発行して実行を許可するという体制を取っており、管理は登記上の事業内容とは独立した形で運営されています。

事業内容のためのリストがある?

シンガポール企業の事業内容は、SSIC(Singapore Standard of Industrial Classification)というリストで包括的に管理されており、シンガポール統計局(Department of Statistics Singapore)により産業別統計を取る際に役立てられています。

全ての産業をAからUまでのアルファベットで代表される21のSectionに区分し、5桁のコードのうち、最初の2桁で次の区分であるDivisionを、次の3桁目~5桁目で詳細区分であるGroup、Class、Sub-classを示す仕組みになっています。

2020年版は以下のサイトからダウンロード可能です:
https://www.singstat.gov.sg/-/media/files/standards_and_classifications/industrial_classification/ssic2020report.pdf

なお、SSICは国連統計局が用いるISIC(International Standard of Industrial Classification of All Economic Activities)という事業内容リストをベースに数年に一度内容を更新しており、対応する事業内容が国内に存在する場合には、できる限り同じ番号が用いられるよう工夫されています。

事業内容の区分の構造を解説!

事業内容は経済活動を特定の文言で区分したもので、企業により創出される経済活動単位(Economic Unit)の内部に、以下の3つがあると理解されています:

  • 主要な活動(Principal Activities)
    経済活動単位が最大の付加価値を創出する活動
  • 副次的活動(Secondary Activities)
    主要な活動以外で同じ経済活動単位で実行される活動
  • 補助的活動(Ancillary Activities)
    主要な活動を補助する目的で履行される活動

この中、企業の事業内容としては、主要な活動及び副次的な活動のみが考慮され、補助的な活動は度外視されます。

さらに主要な活動、副次的な活動は、それぞれ企業の活動を大きくSectionで区分して割り当て、そのうち上位2点について、更に厳密にDivision、Group、Class、Sub-classと詳細なコードを決めるようになっています。

具体的には以下のように、図の上の方から事業内容で主要な活動(オレンジ)と副次的活動(薄緑)に分けられ、下に進むにつれて細分される要領でSub-classまで確定していきます:

Section

事業区分

付加価値割合

Section C

製造事業

40%

Section L

不動産事業

20%

Division

分類

付加価値割合

24

金属製造

15%

27

電機製品製造

25%

68

不動産業

20%

Group

詳細

付加価値割合

241

鉄鋼製

15%

272

バッテリー製造

15%

275

家電製造

10%

681

賃貸不動産業

20%

Class

詳細

付加価値割合

2410

鉄鋼製

15%

2720

バッテリー製造

15%

2750

家電製造

10%

6810

賃貸不動産業

20%

Sub-class

詳細

付加価値割合

24101

鉄鋼圧延製

15%

27201

メイン部品製造

15%

27509

家電製造一般10%

68101

ディベロッパー

20%

主要な活動:バッテリーのメイン部品製造活動(27201)
副次的活動:賃貸不動産のディベロッパー活動(68101)

結果として、シンガポール企業の事業内容は、上記の例のように2つに集約されることになります。

また、上記のように、細分化すれば付加価値割合が15%でしかないものの、主要な事業の主要な活動、と位置づけられる活動が主要な活動となることに注意が必要です。

事業内容の登記変更は容易!

事業の統廃合、方針転換などが行われれば、当然一つの企業の主要な活動、副次的活動が変更になる可能性はあります。

その場合、できる限り速やかに会計企業規制庁ACRAに変更を登記することになりますが、シンガポールの手続きはBizFile+というポータルサイトで変更を行えば完了するという、非常に簡便な制度になっています。

ただし、権限の付与状況等によって自分一人ではやり遂げられないこともあるため、会社秘書役(Corporate Secretary)に連絡して変更を依頼するといいでしょう。

法律に関するお問い合わせはもちろん、税務や人事に関するお問い合わせも、お待ちしております。


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