シンガポールの高齢化と社会保障

労務

皆さん、こんにちは。シンガポール駐在員の岩城です。

 今回はシンガポールが抱えている高齢化について見てみます。近年、アジア諸国では、日本同様高齢化の波が押し寄せており、その中でもシンガポールの高齢化は今後、急速に進んで行くと言われています。

 実際に、シンガポールの高齢化率は2年後の2016年には高齢化率が14%を超える「高齢社会」に突入すると予想されております。高齢化が進むにつれ、社会保障費が高騰し、財政を圧迫するのは日本の状態を見れば明らかですが、これまでシンガポールは社会保障費を特段変化させる事はせず、財政の健全を保ってきました。2009年のリーマンショックの際は別として、その年以外は全て国家予算は黒字を保っており、安定成長が続いています。

 しかし、2014年度の予算案において、将来にわたる社会保障費の増大に対処すべく、CPF(中央積立基金)の企業負担を増加させる方針(2015年より実施)を打ち立てました。これにより、今後企業のCPF負担が増加し、各企業における採用戦略に影響をもたらすものと考えられます。以下、CPF負担率について確認してみましょう。50歳以下の従業員に対する企業側CPF負担率は16%でしたが、2014年度予算案により、1%増加の17%負担となりました。51歳以上55歳以下については、2%増加の16%負担、56歳以上60歳以下については1.5%増の12%負担、61歳以上65歳以下については1.5%増の8.5%負担、66歳以上については1%増の7.5%負担となります。
 例えばシンガポールで医療等を受ける場合、まず政府系の病院にかかることになり、ここでの医療費はかなり安いものとなっております。ただし、専門治療を受ける場合には、政府系の病院から紹介状等を書いてもらい、私立の専門医師から治療を受ける事となります。私立病院の医療費はかなり高額となっており、シンガポール人等であれば、CPFより医療費を切り崩して支払う事となり、日本人等の駐在員は海外赴任者保険により賄っています。

 CPFはシンガポール人もしくはPR(永住権)保持者に対して加入義務が課されるものであり、EP(就労ビザ)保持の日本人駐在員には課されません。ただし、近年EPの取得に対する制限が厳しくなっており、経営のローカライズが求められております。しかし、周辺のアジア諸国に比べて人件費はかなり高く、シンガポール人等の採用は企業のコストを逼迫させている現状があります。

 シンガポールにおいて、雇用主及び被雇用者に対して社会保障費が他国より高く設定されており、また、女性の就業率が2013年では約60%という高水準であることが自助の政策を踏襲できたものとされています。しかし、先にも述べたように高齢率がますます進んで行くこと、また所得格差も広がっている現状、各種サービスを受けられる差が広がることも懸念され、国家による補助が必要になってくるものと考えられます。
 今日まで、奇跡と呼ばれたシンガポールの成長ですが、この新たに直面する問題に対してどう対応していくのか、注目が集まっています。

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Tokyo Consulting Firm Co. Pte. Ltd.,
岩城 徳朗(iwaki noriaki)

 

 

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