シンガポールの永住権も一苦労?PR保持者が見る厳しいルール!

法務

 

印紙税の安い住宅の購入、就労ビザがなくても滞在可能、兼業の自由、CPFの福利など、数多くの社会的優遇が行われるシンガポール永住権(Permanent Residence:PR)ですが、誰でも守る必要のある公共のルール以外にも、意外と知られていない苦労があります。

今回は、雇用者側の実務の視点を織り交ぜて、簡単にシンガポールPR保持者の事情をお伝えします。

 

そもそもどうやったらPRがとれるの?i

年々足切り要件が厳しくなっているのは就労ビザと同じですが、PRは原則として、以下の条件に該当している外国人なら申請が可能です:
・シンガポール国籍/永住権保持者の配偶者
・シンガポール国籍/永住権保持者の子供
・シンガポール国籍保持者の両親
・就労ビザ保持者
・就学ビザで在学中の学生
・国内投資家

参考;https://www.ica.gov.sg/apply/PR/apply_PR_who

もちろん、申請をしたら誰でもPRが得られるわけではなく、学歴、在星年数、家族構成、収入、年齢、職業・専門知識などを基準に、これからシンガポールに貢献できそうな人が選ばれます。

 

福利はこう変わる!i

日本の厚生年金に少し似て、シンガポールではPR保持者に対し、CPF預金の関係で月給の17%分を余分に支払う義務が生じます。

単純に給与が17%増えるのと同じ財政負担になるため、変更時には雇用条件の見直しが必須になります。

女性の場合、出産休暇が12週間から16週間に伸びる可能性が高いですが、有給休暇となる給与に関しては、政府の補助で8週間分が賄われるため、企業側負担は8週間分、外国人の出産休暇と変わりません。

その他の福利も、基本的には政府から援助金が出る形で有給を付与することになりますが、とにかくシンガポール特有の有休を取得するチャンスが増大するという認識が必要です。

 

一方、就労ビザで働く駐在員の扱いであれば、住宅手当や個人所得税の負担が会社の側にあることが多いですが、PR保持者の従業員に対しては通常、住宅費用や個人所得税を自己負担とすることができます。
本来は無関係ですが、こちらを自己負担とする代わりに、シンガポールで一般的なAWS(Annual Wage Supplement:十三か月給与)を支払うというのが、よくある待遇の変更といえます。

 

男性は兵役がある!i

男性の外国人がPRを取得すると、シンガポール国民と同様に兵役(National Service)の義務が課せられます。

技術職人スキーム(the Professionals/Technical Personnel and Skilled Workers Scheme)や投資家スキーム(the Investor Scheme)で取得できた人は免除になりますが、それ以外の男性は原則マストで毎年最大40日の兵役に就かなければなりません。

 

40歳(士官は50歳)に達してしまうと、この義務もなくなりますが、今度は自分の子供が男児の場合にPRを取ったら兵役、ということになります。

シンガポール法人の雇用者の立場からは、同じ最大40日間、PR保持者の従業員が兵役に出るという認識を持っておく必要があります。基本的には政府からの補助金で全額賄われますが、有給として休みを取らせ、給与を支払う必要があります。

 

出国の際は要注意!期限切れの恐怖!i

パスポートの期限切れは、滞在国の国民にならない限り、誰でも注意が必要ですが、PRを取得したら、その永住権の有効期限も重要になります。

通常、シンガポール永住権は5年ごとに更新が必要で、帰国を考える人はそのタイミングで更新せず、PRを返却する場合がよくあります。

 

この点はEPなどの就労ビザの方も同様ですが、PR保持者にはさらに、出国の際毎回求められる、REP(Re-Entry Permit:再入国許可証)を取得する必要があります。

REPは、PR保持者であれば特に追加の書類提出も必要なく、オンラインで申請してS$10払えば入手できる簡単な許可証ですが、このREPを取得/更新せずシンガポール国外に滞在すると、最悪の場合PRを取り上げられてしまうため、有効期限には注意が必要です。

なお、更新は期限切れの3か月前から申請が可能で、通常1日で発行/申請結果が通知されます。

参考:https://www.ica.gov.sg/PR/reentry/pr_reentry_apply

 

更新を忘れて出国してしまったら、シンガポールに帰国し次第、ICA(Immigration and Checkpoint Authority:シンガポール入国管理局)に連絡して指示を仰ぎ、窓口で手続きを行うようにしましょう。

法務に関するお問い合わせはもちろん、税務や労務に関するお問い合わせも、お気軽にお寄せください。

 

 

株式会社東京コンサルティングファーム  シンガポール法人
近藤貴政

kondo.takamasa@tokyoconsultinggroup.com

+65-6632-3589

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