シンガポールにもあるの?外国税額控除の詳細をチェック!

シンガポールの外国税額控除

 

2010年以来、17%という法人税率で、アジアでも有数の低税率国として外資を呼び込んできたシンガポールですが、外国税額控除(Foreign Tax Credit)という制度が存在していることは、あまり知られていないように思われます。

シンガポールは徴税に対する考え方が属地主義、所得の発生した場所でのみ課税されるべきだという考え方で運営されているため、例えば個人所得税には、ほかの外国と日本との間で発生するような、外国税額控除の制度は存在しません。

 

しかし、法人間での取引となれば、シンガポールと諸外国の租税条約がものを言います。海外送金に源泉徴収税が発生するのは一般的ですが、それと組み合わせた合計が法的な税率よなるよう、調整される必要があります。

そこで設けられているのが外国税額控除。今回は、その詳細を見ていきましょう。

 

まずは基本のDTA!

外国税額控除の基本的な考え方は、二重課税の回避です。
いわゆる「租税条約」は、英語でAvoidance of Double Taxation Agreementといい、後ろの3語の頭文字をとってDTAと略して呼ばれます。

これは、2か国にまたがる取引があった場合、1か国で支払われた税金が他国でも徴収されてしまうと二重課税となるため、これを回避するために、他国の側で当該1か国の徴税分を相殺する、という制度です。

 

例えば、ある国のA社からS$10,000の利息がシンガポールのB社に振り込まれるとすると、A社は送金後に10%に当たるS$1,000を源泉徴収税として自国の税務署に支払わなければなりません。
B社のほうでは受取利息としてS$10,000入金したら、シンガポールの法人所得税に沿ってS$1,700納付の義務が生じます(簡易的に17%とします)。
すると、同じS$10,000に対して、双方で合計27%税金が発生しているということになります。

A社が支払った金額を証明し、シンガポール側でS$1,000還付を受けることで、2社・2か国合計の納税額が、シンガポールの税率17%を超えないようにするというのが、外国税額控除です。

なお、シンガポールはアメリカなど例外はありますが、世界中の主要な外国とDTAを締結しており、ほとんどの場合で源泉徴収税率が10%に抑えられています。

この場合、A社に当たる相手の国の会社が当該他国にあることを証明する書類、COR(Certificate of Residence)をシンガポール税務当局IRASに提出する必要がありますのでご注意ください。

 

 

DTAがなかったら? 一方的に対応します!

では、租税条約がない国とのやり取りでは、二重課税が発生してしまうのでしょうか。

実は日本の場合も同じなのですが、他国で源泉徴収税を納付した事実があれば、条約がなくても一方的に納付額を還付する、UTC(Unilateral Tax Credit)という制度がシンガポールには存在します。

これにより、基本的にはほとんどの外国源泉の所得について、外国税額控除が適用されることになっています。

 

注意点は? 17%の税率で課税されること自体です!

実は、ここで注意が必要なのは、比較的低いといわれるシンガポールの法人税率です。
上の例ではA社の国の源泉徴収税率は10%ですが、もしA社が源泉徴収税率の高い国にあって、例えば20%の税率で税金を支払った場合、シンガポールの法人税率の17%以上は還付されず、3%は戻ってきません。

また、いくら二重課税を回避する条約があったとしても、シンガポールでそもそも税金の徴収が行われない状況であれば、還付という考え方は取られません。

 

外国税額控除の条件は以下のようにまとめられます:
1.シンガポールにある会社が居住者として課税対象であること
2.利益が出ていること(赤字で納税額がゼロはいけない)
3.取引自体が当該他国とシンガポールの両方で課税対象であること(受取利息、配当金など、他国で源泉徴収され、かつシンガポールでも課税されるものだけが対象)

 

 

さらに便利な考え方、FTCプーリングとは?

あまり知られていない制度ですが、賦課年度(YA)2012から、外国税額控除にはさらなる便宜をもたらすために、FTCプーリングという考え方が導入されています。

これは、上記の「当該取引に関するもの」のみで考えるのではなく、外国で支払われた源泉徴収税をまとめて控除するというものです。

条件は、上記一般の外国税額控除に加えて、他国の法人税率が15%以上であることが挙げられますが、実際に支払われた源泉所得税の総額がシンガポールの法人税率17%を上回る場合には、やはりこの17%で計算された金額までしか還付が行われないことに注意が必要です。

 

いつ申告すればいい? 法人所得税申告時です!

シンガポールの法人所得税申告は会計年度末の属する年の翌年11月末までとされています(※電子申告の期限は12月15日)が、このときシンプルな申告であるForm C-Sではなく、Form Cの形式で申告を行うことで、外国で支払われた源泉所得税額を申告できます。

 

申告時に求められる情報としては、以下のものがあります(括弧書きはIRASの表現):

  1. 法域=源泉徴収税支払地(Jurisdiction in which foreign tax was paid)
  2. 所得の性質=種類(Nature of the income)
  3. サービスの概要、当該他国法域におけるPEの有無(Description of the services rendered, and whether the income was derived through a permanent establishment in the foreign jurisdiction and your basis for this claim, if applicable)
  4. (当該他国法域の)納税者名(Name of the payer)
  5. 源泉徴収税の納税月日(またはその証書の発行日)(Date of withholding tax receipt/ voucher)
  6. 所得の控除前金額、源泉徴収税率、当該他国通貨による金額と相当のシンガポールドル金額(Gross amount of income, withholding tax rate and amount of tax withheld in foreign currency (include the corresponding S$ amount))
  7. 源泉所得税額がDTAによる場合にはそのDTA中の関連条文(For a claim of double tax relief, the relevant Article of the Double Taxation Agreement under which the tax was withheld)
  8. 源泉徴収税の納税証明(Withholding tax receipt/ voucher)

 

なお、こうした一連の記録は、最低5年間は保管するよう定められています。

参考(IRAS納税ガイド):
https://www.iras.gov.sg/IRASHome/uploadedFiles/IRASHome/e-Tax_Guides/e-Tax%20Guide_CIT_Foreign_Credit_Pooling_2013-12-27.pdf

 

 

 

 

【問い合わせ先】

株式会社東京コンサルティングファーム  シンガポール法人

近藤貴政

kondo.takamasa@tokyoconsultinggroup.com

+65-6632-3589

http://www.kuno-cpa.co.jp/form/

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