シンガポールでテレワークをするなら…?論点はこれ!

労務

コロナウイルス感染遮断の目的でサーキットブレーカーの措置が適用されたシンガポール、行政を挙げての制度徹底が測られています。
民間企業、特に製造業でも店舗ビジネスでないオフィスワーカーを抱える企業にとっては、テレワークを余儀なくされ、多くの方が自宅で仕事をしている状況です。

この点、元々柔軟な働き方を許容することで、できる限り失業率を下げようと、Flexible Work Arrangementの導入を推奨していたシンガポールの取り組みが生きてきます。

今回は、テレワークのポイントをまとめてお伝えします。

テレワークの要件は?

テレワークはシンガポールではTelecommutingと呼ばれることも多く、場所を選ばない働き方を指しています。

必ずしも自宅に限定されず、サテライトオフィスやワーキング・ブースに入って行う仕事、移動中に行う仕事もすべて就業していると見做せばテレワークとなります。

ポイントとしては、多くの企業の場合、こうしたテレワークの取り組みは、飽くまで現行の雇用契約の延長であり、原則としてその雇用契約の内容を破棄するものではないということに注意が必要です。

以下、その他のポイントを見ていきましょう。

就業時間か成果物か

テレワークでまず問題になるのは、どのように勤務を管理すればいいかという点です。

就業時間をベースに欠勤した時間数分給与を天引きするような形で給与計算をしていた企業にとっては、テレワークにおける時間の管理、特に監視の部分が課題となります。

この点、多くの給与計算ソフト会社では、パソコンを使用している時間をモニターしたり、定時で従業員の状態を写真撮影して送信したりする形でソリューションを提供しています。

しかし、実はシンガポールの国自体も、テレワークなどFlexible Work Arrangementを想定する上で一番考慮すべきとしているのは労働生産性です。

もちろん、コアタイムの間はメールやテレビ電話で連絡がつくようにしておく、定時の会議にはオンライン・セッションで参加するなど、基本的な要求は問題ありませんが、時間単価で給与を計算し「~時間働いたから」給与を支払うのではなく、勤労の結果としてどのような成果物を提出したか、といった部分を見て報酬を設定すべきだ、という考え方が徐々に主流になりつつあります。

こうした部分を企業側からの期待値(Expectation during Working Hours)として明示しておくことは、非常に重要です。

会社は何を貸与するべき?

テレワークのためには、当然にインターネットが必要になります。

シンガポールではどこの家庭も自宅にネットを引いているのが当たり前ですが、ネット契約の内容によっては制限があるなど個々の事情に応じた対応が必要です。

基本的には、スマートフォンとパソコンの利用、必要に応じてプリンターとスキャナーの貸与や支給が求められます。

個別、従業員の自宅環境などに応じて、現金を支給したり、現物支給したりして環境を整えることが必要になるでしょう。

また、紙面の資料を参照して作業する従業員については、その内容の共有のためにスキャンやコピー、郵送を行う必要も出てきます。

こうした費用も余計に掛かるのであれば、会社側の負担として設定することになります。

テレワークにかかる費用は、多くの場合費用明細として従業員が証憑と併せて提出し、企業側が給与支給に合わせて払い戻す(Reimbursement)形で行われます。

個人の所得ではないため、給与計算の際には留意します。

外出が必要な時の手続きは一括で?

特にシンガポール・コロナウイルス対策のサーキットブレーカー措置において需要なのが、外出が必要になったときの手続きです。

重要業種における勤務を除いては、各企業、月に数回に限定して事務所に資料を取りに行くなどすることができますが、この申請は必ず事前に行う必要があるので注意が必要です。
リンク:https://form.gov.sg/#!/5e8c0fce6904e80011ed67a1

CorpPassの情報を入力して実行する必要がある点でも、会社を代表して総務担当、人事担当者らがまとめて申請を行うことが望ましいでしょう。

守るべきは企業秘密?

見逃されがちな管理面ですが、テレワークで一番のリスクは、会社の情報を以下に保全するかという点にあります。

上記、パソコンでの作業や資料の持ち出しを許すことは、テレワークで必要な処置ではありますが、従業員が会社の情報のすべてをあるかうことができる環境では、意図的であるか否かによらず、外部に情報が洩れる可能性が高くなります。

こうした情報の取扱いに関しては、まずファイル共有アプリなどを整理、管理してアクセス権限を限定すること、ルールを定めてみだりにメール送信したり、個人の端末にダウンロードしたりしないようにコントロールすること、個人情報保護法(PDPA)に則っているか定期的にチェックをしながら、情報の扱い方について社内で啓蒙活動を行うことなど、多くの対策が必要となります。

コンプライアンスとしては一般的な項目ですが、社内であれば確保できるものが、テレワークになると放置されることになりがちであるため、急いで体制を作るときにはある程度専門的な対応を外部に依頼するなどして、万全な対応に心がけたいものです。

評価基準も変える?

シンガポールにおいても、従業員の評価は給与に直結する非常に重要な企業の責務です。

テレワークではオフィスにいれば見える対人関係のスキルや素行、勤務態度などを目で確認することは難しくなりますが、逆に言えば成果物など目に見える指標に基づいて、客観的な評価が下せるようになるということでもあります。

こちらも個別具体的に、企業側がどのような期待をしているか伝えつつ、評価の基準を明確にして組み直す必要があると言えます。

就業規則の作成が必要?

シンガポールの雇用関係はすべて個別の雇用契約書に基づくとされています。

法的にはマストではありませんが、勤務時間や報酬体系など、雇用の根本の部分が変更になってしまう場合には、基本的に書類による双方合意の証明があるべきと理解されています。

この点、どのように勤務し、どのように給与が支払われるか、という点に関して、簡単でも雇用契約の補足書類を作成しておくと安心です。

また、雇用契約書の共通項を集めた集団的合意書と位置付けられる就業規則も、会社のテレワークに対する規則全般を盛り込むことができるという意味では合理的です。

ただし、実際には個別従業員の職務や機能ごとに、規則の設定にもかなりの幅が出てくると予想されるため、基本的には雇用契約書の補足として個別に「テレワークの場合」の規則を作り、全体に共通する部分があればそれを抽出して就業規則に盛り込むような対応が望ましいと考えられます。

サーキットブレーカー措置に対応して急遽テレワークを導入するような場合は特に、「試験導入期間(Pilot period)」として実施することを明記しながら、規則にも変更の余地があることについて十分に説明、合意を設けておくことが重要になるでしょう。

なお、シンガポール政府機関からも、今回の措置に対応してテレワークが一斉に導入されることを受け、テレワーク用ポリシーのサンプルが公開されています。

https://www.tal.sg/tafep/-/media/TAL/Tafep/Employment-Practices/Files/Work-Life_Menu_Draft_Policy_for_Telecommuting.pdf?la=en&hash=B322D363B90A180572827446EC434267EB201794

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