シンガポールではみんなが契約社員?雇用と業務委託の違い!

労務

 

平等の原則が行き届いているシンガポールでは、雇用も契約の形態を踏襲し、契約主体である会社と従業員に同等の権利が与えられることになっています。
これは、簡単に言えば、すべての雇用が契約社員のような扱いであることを意味しています。

平等とはいっても、会社の本質が複数人の共同作業にあるのであれば、法人と個人が同等の権利を有している状況下で、強いのは当然法人の側です。

 

このため、シンガポールでも少しずつ、従業員の保護が法律として固められつつありますが、それでもまだ雇用者に有利な現状がある中で、時に不明確になりがちなのが、雇用と業務委託の違いです。

今回は、他の国ではあまり問題にならないこの違いについて、論点を整理してお伝えします。

 

英語ではどう区別される?

雇用(Employment)と業務委託(Outsourcing)は、どちらも契約に基づいてアサインされたタスクを実行し、その対価をもらう関係です。

特にシンガポールでは、雇用関係が柔軟にとらえられ、ごく最近の雇用法改正(2019年4月1日)まで、福利厚生も合意に基づいていれば、一定以上の収入の従業員には絶対のルールは存在しなかった経緯があり、雇用と業務委託の線引きは微妙でした。

この違いを表現するために用いられるのが、「Contract of Service(業務の契約=雇用)」と「Contract for Service(業務用契約=業務委託)」という区別です。

 

どうして区別する必要がある?

雇用関係になってしまえば、従業員の行う業務はすべて雇用者の管轄となり、責任が生じます。
シンガポールではその責任として、雇用法に従って就業時間や待遇、福利などを取り決める必要が出てきます。

一方、業務委託では業務の執行は請負人の責任となり、依頼人が働き方や福利の付与を行う必要はありません。
月給S$4,500超の従業員にも雇用法が適用されるようになった今、雇用法の適用を行うべきか否かが、最も大きな違いといえるでしょう。

他にも、例えば給与面では、雇用の場合最低でも毎月一回は給与明細を発行する義務があり、シンガポールの年金制度としてCPFやSDLなどを納付する義務も発生しますが、業務委託では契約書に則って、インボイスが発行され次第支払いを行うというだけで事足ります。

また、外国人雇用の場合にはシンガポールの就労ビザに当たるWork Pass(EPやS-Passなど)を申請・発行することになりますが、業務委託であれば請負人が外国人であってもWork Passに関わる必要はありません。

 

 

具体的にはどう区別する?

雇用と業務委託を判別するにあたっては、シンガポールでは主に三つの基準があるとされています。

1.コントロール
採用や解雇を決める権限が誰にあるか、給与体系を誰が取り決めているか、業務の工程を誰が指示しているか、業務の提供に責任を持つのはだれか、という観点で、一元的に片方が主体となるようであれば、それは雇用関係の雇用者だということになります。

2.製造ファクターの所有
職場や仕事道具、ノウハウといった、業務を行う上での有形無形の必要要素を提供しているのが、所有者である一方である場合は、業務委託ではなく雇用だということになります。

3.経済的要因
業務の履行が自己負担であるか、会社側負担であるか、また会社の利益・損失に責任を持ち、それによって収入が変動するような立場であるか、という観点で、会社に属する雇用であるか否かが判断されます。

 

特に能力の高いシンガポール人と一緒に仕事をする場合、以上の基準に照らして、本当に雇用者として従業員の待遇を与える必要があるか、長期にわたっても業務委託の形で報酬を支払うにとどめるべきか、落ち着いて考えるのも面白いかもしれません。

労務に関するお問い合わせはもちろん、会計や税務に関するお問い合わせも、お気軽にお寄せください。

 

 

株式会社東京コンサルティングファーム  シンガポール法人
近藤貴政

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