シンガポールから出向?EPは?CPFは?払うんだっけ?

周辺諸国からこぞって出稼ぎの人が働きに来るシンガポールですが、国を変えて収入を得るということは、それほど単純なことではありません。

 

税務上の居住者、非居住者の定義、国籍や永住権を保持していることと居住者であることの立場の違い、CPFやSDLの納付義務、給与支払い場所と課税所得の範囲、出向の待遇と雇用者の関係、EPその他就労ビザの取得要件など、様々なことが法律により規定されていますが、正確に理解しているといえる人はシンガポール人でも多くないでしょう。

 

今回は、そんなシンガポールの法律がらみの労働事情を、2ケース見ていきましょう。

 

 

シンガポール勤務≒SDLの申告・納付

 

通常、シンガポールに長期滞在して就労する場合にはEP(Employment Pass)を取得します。

 

この場合、完全に雇用者(Employer)の立場で行動するManaging Directorなどの地位にある人を除き、基本的にはすべての外国人が被雇用者(Employee)として認識されるため、SDL(Skills Development Levy)という一種の社会保険料を徴収されることになります。

 

これは、被雇用者と見なされるすべてのスタッフがSDF(Skills Development Fund)という福祉団体に支払う寄付金のようなもので、給与に応じて収入の0.25%が徴収されます(ただし上限はS$ 11.25)。

 

会社としてCPFを申告する際に、同じページからSDLを入力することで申告され、そこで入力される支払い方法に従って引き落としなどにより納付が完了します。

 

EP保持者のSDLは自動計算されないため、注意が必要です。

 

なお、この外国人の人数及び給与はEP申請時のEPOLに記載の情報を基にして計算されており、EP保持者が帰国し、EPをキャンセルした時点で計上されなくなる仕組みです。

 

納付漏れがあった場合には書簡で通知され、ホームページ上で納付手続きをするよう促されますが、特に罰金等は発生しません。

 

 

シンガポール人の出向、CPFを持つのはどっちの会社?

 

シンガポール国籍・永住権保持者は、老後のための強制積立制度であるCPF(Central Provision Fund)に給与の一定額を拠出する義務があります。

 

従業員がシンガポール人の場合、会社が源泉徴収の形で定率(多くは20%)を差し引き、さらに会社自体の拠出額(多くは17%)を付け足して、毎月納付することが一般的です。

 

では、このシンガポール人が海外に出向し、国外の会社から給与を支給される場合はどうなるのでしょうか。

企業としてCPFの申告サイトにアクセスするにはシンガポール登記会社に与えられる個別企業登録番号、UEN(Unique Entity Number)が必要であり、国外の企業にはそれができません。

 

実は、CPFはシンガポールにおける個人所得税と同じ性質をもち、各人の所得がシンガポール国内を源泉とする場合のみ、徴収されることになっています。

したがって、海外に出向したシンガポール人は、その給与がすべて海外の労働に対する対価である限り、CPFの納付義務がないことになります。

 

特徴的なのは、上記納付義務は、たとえ当該シンガポール人が国内に居住しており、毎日マレーシアやインドネシアに国境をまたいで就労する場合でも、義務はないとされる点です。

日本の住民税と違い、所得の源泉に紐づけている点に注意しましょう。

 

なお、CPFは本来各人の将来のための拠出であるため、本人が自己責任で納付を希望する場合はSingPassを用いて自己負担額(多くは20%)のみを申告・納付することも可能です。

 

 

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