企業成長の鍵を握る「3つの仕組み化」- 全員で取り組む持続可能な組織づくり
はじめに:企業の成長と私たちの役割
皆さんは、企業にも「ライフサイクル」があることをご存知でしょうか?全ての企業は、導入期から成長期、成熟期を経て、やがて衰退期に入ります。しかし、この流れは避けられないものではありません。私たち社員一人ひとりが、企業の持続的な成長に貢献できるのです。
企業が長期的に成功するためには、常に変化し続ける必要があります。これは経営陣だけの仕事ではなく、私たち全員が関わるべき重要な課題です。本記事では、私たち社員がどのように企業の成長に貢献できるかを、「3つの仕組み化」という観点から解説していきます。
企業成長のモデル:起業家クワドラント
企業の持続的成長を実現するためのモデルとして、「起業家クワドラント」があります。これは以下の4つのステージで構成されています:
- 起業家:事業立ち上げの段階
- 幹部:社長の業務を社員に移管する段階
- 標準化:業務を標準化し、経験者でなくてもできるようにする段階
- 省人化:より少ない人員で仕事ができるように生産性を上げる段階
私たち社員は、特に「標準化」と「省人化」のステージで重要な役割を果たします。これらのステージでは、個人の知識や経験に依存するのではなく、誰でも実行可能な形に業務を変換していくことが求められます。
3つの仕組み化:私たちにできること
企業の持続的成長を実現するためには、3つのレベルでの「仕組み化」が重要です。これらは組織のヒエラルキーに対応しており、私たち社員はそれぞれのレベルで異なる貢献ができます。
- ロワーマネジメント(LM)の仕組み化:問題発見型アプローチ
- ミドルマネジメント(MM)の仕組み化:課題設定型アプローチ
- トップマネジメント(TM)の仕組み化:イノベーション型アプローチ
1. ロワーマネジメント(LM)の仕組み化:私たちの日常業務の改善
LMの仕組み化の中心は「標準化」です。これは私たちの日常業務を誰でも同じように行えるようにするプロセスです。標準化には以下のようなメリットがあります。
– 生産性の向上
– 教育期間の短縮
– 企業ブランドの構築
私たちにできることは、日々の業務の中で「問題発見型アプローチ」を実践することです。これは既に発生している問題に対して、解決方法を発見することを指します。例えば、予算未達の場合、その原因を分析し対策を立てるといったことが該当します。
2. ミドルマネジメント(MM)の仕組み化:部門を超えた改善
MMの役割は、LMよりも大きな視点で構造的改革を行うことです。ここでは「課題設定型アプローチ」が重要となります。これは、あるべき理想的な姿から根本的な課題設定を行う方法です。
私たちにできることは、自部門だけでなく、他部門との連携を意識した改善提案を行うことです。例えば、コストダウンの目標を設定する際、3~5%という小幅な削減ではなく、30%、50%といった大胆な目標を提案することで、新しい発想を促すことができます。
3. トップマネジメント(TM)の仕組み化:イノベーションへの貢献
TMの仕組み化の中心は「イノベーション型アプローチ」です。これは会社の「あるべき姿」から課題設定を行い、新たな事業機会や戦略を模索する方法です。
私たちにできることは、日々の業務の中で「今行っていることが戦略的に正しいことなのか?」「もっと良い方法や機会はないのか?」と常に問いかけることです。これらの問いかけを通じて、新しいアイデアや改善案を提案することができます。
トヨタ式カイゼンから学ぶ:私たちの日常に活かせること
トヨタ自動車は「仕組み化」に最も成功した企業の1つです。トヨタのアプローチから私たちが学べる重要な概念が2つあります:
- 仕事 = 作業 + 改善
- トヨタ式5W1H
1. 仕事 = 作業 + 改善
トヨタでは、改善活動は仕事の一部として位置づけられています。私たちも、単に与えられた作業をこなすだけでなく、常に改善を行うことを意識しましょう。
2. トヨタ式5W1H
問題の根本原因を追究するために、「なぜ」を5回以上繰り返すことで、表面的な対症療法ではなく、真の解決策を見出すことができます。日々の業務の中で、この考え方を実践してみましょう。
ボトムアップ経営の実現:SCADサイクル
持続的な成長のためには、私たち社員からの提案も重要です。これを実現するための1つの方法が「SCADサイクル」です。
SCADは以下の4つのステップで構成されています。
- Share (共有)
- Check (確認)
- Adjust (調整)
- Do (実行)
このサイクルを日々の業務に組み込むことで、私たちの知恵を集積し、継続的な改善を促進することができます。
まとめ:私たちにできること
企業が持続的に成長し、競争力を維持するためには、私たち社員一人ひとりの貢献が不可欠です。以下のことを心がけましょう。
- 日々の業務の中で、常に改善の機会を探す
- 問題の根本原因を追究し、真の解決策を見出す
- 部門を超えた視点で改善提案を行う
- 新しいアイデアや事業機会を積極的に提案する
- SCADサイクルを実践し、継続的な改善を行う
これらの取り組みを通じて、私たちは以下のような成果を組織にもたらすことができます。
– 生産性の向上
– 品質の安定化
– イノベーションの促進
– 組織の適応力強化
– 持続的な競争優位の確立
私たち一人ひとりが、これらの「仕組み化」に積極的に参加することで、企業の長期的な成功に貢献できるのです。日々の小さな改善の積み重ねが、やがて大きな変革につながります。共に成長し続ける組織を作り上げていきましょう。
参照元:やっぱり「仕組化」第1章
東京コンサルティングファーム
社長補佐
前田 英樹