フィリピン 剰余金留保で税率10%の追徴課税?!IAETの対応策とは?!

フィリピン税務コンプライアンスチェック 剰余金留保で税率10%の追徴課税?「IAET(不当留保課税)に対する対応策」

こんにちは、Tokyo Consulting Firm Philippine Branchの大橋 聖也です。

【1分でわかるフィリピン進出のイロハ】
No.55< 剰余金留保で税率10%の追徴課税?!IAETの対応策とは?! >

今回は、【IAET(不当留保金課税)に関する対応策】をご紹介します。

日系フィリピン子会社の税務コンプライアンスチェックにあたって、毎期末に剰余金留保に関する取扱いの検討が必要になると考えられます。

フィリピンでは、SECとBIRでそれぞれ会社法と税法の観点から留保金の規定が定められています。

SEC:超過剰余金規制(会社法43条)
BIR:不当留保金課税(IAET:Improperly Accumulated Earnings Tax)

いずれも払込資本金を超える利益剰余金の留保によって、罰則や追徴課税が発生することが明記されています。

不当留保金課税制度 (IAET) は、利益を配当する代りに留保することで、株主に対する所得税回避を目的とする法人に適用され、原則として、毎課税期間、企業内に不当に留保された超過剰余金に対して10%の税金が課せられる制度です。

利益の不当留保とは、利益剰余金累計額が払込済資本金を超え、かつ事業上の合理的な理由がない場合など、当該超過剰余金額は利益の不当留保であるとみなされることを言います。

また、銀行及びその他金融機関、保険会社、経済特区に登録されたPEZA企業等はIAETの対象外となります。

一方で、SECでの会社法43条では、IAETと異なり、この規定 はPEZA企業であっても免除はされず、また日本の親会社による100%子会社であっても適用されます。
よって、超過剰余金が存在する企業は、財務諸表の注記において超過剰余金の使途 (配当、拡張 投資等) を開示しなければならず、これに従わない場合、罰金等のペナルティの対象となってしまいます。

では、利益剰余金が払込資本金を上回ってしまった場合、どのような対応方法が考えられるのでしょうか。

主に、4つの方法が考えられます。

1 増資
→増資を行い、払込資本金の額を増やす方法です。
2 現金配当
→現金での配当によって、超過剰余金の額を減らす方法です。
3 株式配当
→キャッシュが不足している場合、超過剰余金を資本金に組み入れる方法です。
4 投資計画の開示
→来期以降での実行確実な投資計画を取締役会等で承認を取り、正当化する方法です。

更に、日本の親会社への現金配当の場合は、キャッシュフローや最終源泉税30%の課税(租税条約による10%or15%の軽減税率が適用可能)、増資や株式配当の場合は印税税や会社法上の所定手続き等を考慮することが必要になってきます。

このようにフィリピンでのビジネスが軌道に乗り、フィリピン子会社の超過剰余金が見込まれる企業は、毎期末いずれかの対応策への検討をお勧めします。

最後に、2017年9月に弊社フィリピン本の第2版が、出版されました。
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今週もどうぞよろしくお願い致します。

 

Tokyo Consulting Firm – Philippine Branch
大橋 聖也

2012年、東京コンサルティンググループに入社。中小企業の発展、会計業界の生き残りを掛けて、社外CFOとして社長のビジョン実現をサポートする、ビジョナリーコンサルティングを立上げに奮闘。社長の抱えるお困り事解決すべく経営理念の策定・経営会議のファシリテート・財務分析等の支援を行う。2016年10月より、フィリピン支店の拠点長として世界に活躍のフィールドを拡げ、真の顧客貢献を目指す。

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