今、ミャンマーの知的財産権が変わる!~商標法編~

法務

 

ミンガラーバー、
東京コンサルティンググループ
ミャンマー支社の西野由花(にしの ゆか)です。

 

2019年1月から5月にかけて、日本の特許庁とJICAの支援を受けて知的財産に関する法律(商標法・意匠法・特許法・著作権法) が成立しました。

ミャンマーと言えば、今まで知的所有権保護に関する法制度が不十分であることで知られていました。
特許法、意匠法、商標法などは存在せず(特許・意匠・商標の登録に関しては登録法として規定がありますが、権利を発生させるものではありません)、唯一存在していた著作権も1914年、
まだミャンマーがミャンマーでもビルマでもなくイギリス領インドの一部であった時代に制定されたものです。
今回、商標法・意匠法・特許法・著作権法のこれら4つ知的財産法が施行されれば、知的財産権に関して一定の保護が期待できます。

そんな知的財産権について、今回は1月に成立した商標法・意匠法について二回に分けて説明したいと思います。

 

【商標法の概要】

商標法は商標の出願、審査、登録だけでなく
地理的表示や商号の保護、そして知的財産裁判所の設置やその権能、税関における侵害品差止めの申請手続等、
商標等の表示に関わる知的財産が有効に保護されるための規定を包括的に盛り込んだ法律となっています。

 

これまでミャンマーでは先使用主義(※)の国でしたが、今回の商標法によって先願主義(※)と定められたのが特徴です。
出願は英語又はミャンマー語で行うことができます。

※先使用主義→先に使用を始めた者が優先的に登録を認められる。使用することによって権利が発生する。という考え方です。(代表国:アメリカ)
先願主義→先に出願された商標の登録を認めるという考え方です。(代表国:日本など多くの国)

 

【標章の定義】
商標の定義はJICAの和訳によると
「標章とは、個人名、文字、数字、図形要素、色の組み合わせ、又はそれらを
組み合わせたものを含む、事業における商品及び役務を他者のものとの区別
を可能にする視覚的標識をいう。この用語には、商標、サービスマーク、団
体標章、及び認証標章を含む。」
となっています。

 

【権利の存続期間】
権利存続期間は、出願日から10年です。
10年毎に更新することが可能です。
更新を行う際には、所定の費用を支払った上で、登録の期間満了日の 6ヶ月以内に当該登録の更新申請を行うことが必要です。
仮に更新申請を6ヶ月以内に行わなかった場合、権利者は所定の登録費用と遅延料金を支払うことで、登録期間満了日から6ヶ月間の猶予期間内に更新の申請を行うことができます。

登録機関が満了し6ヶ月経っても更新申請がなかった場合、その標章の登録は取り消されます。

 

【登録の拒絶理由】
登録の拒絶理由として、以下の項目があげられています。

  • 標章の識別性がない場合
  • 公序良俗や倫理・宗教など文化的・慣習的なものに反する標章
  • 記号又は表示のみから構成される標章で、取引慣習の中ですでに一般的であったり慣習的であったりするもの
  • 欺罔的である標章
  • 国家の統制又は保証を示唆するもので、許可を与えられておらず、市民に誤解を与えてしまう可能性のあるもの
  • ミャンマー国が批准している国際条約に従い特に保護されている記号を含むもの
    すでに登録出願申請のあった標章と類似であるか、誤解を与える可能性のあるもの
  • 個人や法人に悪影響を及ぼす可能性があり、当該個人や法人の同意を得ないもの
  • 他者の知的財産権を侵害する可能性のあるもの
  • 不誠実に登録出願が申請されたもの
  • 著名な標章と同一又は類似し、標章をしようする商品やサービスも類似又は同一であるなど、需要者に誤解を与えるようなもの
  • 登録済みの著名な標章と同一又は類似しているが当該登録済み著名標章が保護されている商品やサービスとは異なる商品・サービスについて使用されており、上記二つの商品・サービスに繋がりがあると示唆できるもので、そのような使用が当該登録済み著名標章の権利者の利益を害する可能性があるもの

 

【旧商標法で登録をしてある商標はどうするべきか】
新商標法の施行に当たり、旧商標法下で登記された商標の権利者は新商標法に基づき再出願を行うことが必要です。
この場合、登記証明書が審査で考慮される可能性があります。
また、商標の登録を行っていないが、すでに使用している標章に関して、新商標法の権利を受けるためには登録を行う必要があります。
この場合、すでに使用を行っている標章に対しては一定の優先期間を与えるとされています。

 

【法案の施行日はいつか】
各法案の施行日は、知的財産の登録・審査等の実務を担う知的財産庁 の設立時期を勘案しながら発表される予定です。

商標法が変ることで必要な手続きは増えますが、
模倣品が日々世界中であふれている現状、自社の商標を守ることのできる法律は必要なものでもあります。
ミャンマーでは法や新しいルールが突然施行されることもよくありますので、
知らないうちにコンプライアンス違反をしていた。ということも起こり得ます。

 

弊社では刻一刻と変わるミャンマーでの法務の他、
進出前のFS調査から会社設立、会計・事務、労務など進出に係るサポートを一貫してご提供しております。
また、ミャンマーでは大きな課題となっているマネジメント層を育成し、自立型人材へ成長させ企業の業績そのものをあげるための人事評価制度も展開しております。
設立、設立後についてご質問やご不安などございましたら、お気軽に、下記までご連絡頂ければと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 

Tokyo Consulting Firm Co., Ltd (ミャンマー)・ヤンゴン駐在員
西野由花(Nishino Yuka)

※)記載しました内容は、作成時点で得られる情報を基に、細心の注意を払って作成しておりますが、その内容の正確性及び安全性を保障するものではありません。当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても情報提供者及び弊社は、一切の責任を負うことはありませんので、ご了承くださいませ。


【参考】
https://www.jica.go.jp/project/myanmar/028/news/20190527.html
https://iplaw-net.com/doc/2019/chizaiprism_201904_1.pdf

関連記事

ミャンマーQ&A 法人所得税における「居住法人」と「非居住法人」とは何ですか?

ミャンマーQ&A 法人所得税における「居住法人」と「非居住法人」とは何ですか?

ページ上部へ戻る