ミャンマーでホットなトピックである特許法について

法務

ミンガラーバー

ミャンマー拠点の西野由花です。

 

以前、ミャンマー商標法、意匠法の解説をこのブログで行いました。

その後、ミャンマー知的財産庁の解説準備が進み、年内には商標法の正規登録手続きも開始する意向であるとのことです。

 

そんなミャンマーでホットなトピックであるミャンマー知財4法ですが、

今回は特許法の解説を行いたいと思います。

 

【特許法の概要】

特許法では先に制定されたミャンマー商標法などと同様に先願主義が採用され、英語またはミャンマー語での出願が可能となっています。

また、特許協力条約及びWTO加盟の条件であるTRIPS協定の履行(現在ミャンマーは協定履行の経過措置期間、2021年まで)を意識したものとなっており、TRIPS協定に従い、医薬品や医薬品の製造・化学物質等への特許での保護がされない規定が明文化されています。

また、上記商標法、意匠法とこちらも同様に博覧会優先権を含むパリ条約の優先権も存在している他、国際出願制度(※)も存在しています。

 

 

※国際出願制度:特許協力条約(PCT:Patent Cooperation Treaty)に基づく国際出願。特許料力条約をミャンマーが履行した後、出願願書を上記条約に従いミャンマーで提出すれば、PCT加盟国である他のすべての国に同時に出願した場合と同等の効果を得ることができます。

 

【特許の登録要件】

特許の登録要件は特許法13条より、

  • 新規性を有すること:登録や優先権を主張する日以前にその発明の情報が公に確認できないもの
  • 進歩性を有すること:専門分野の目から見ても、その発明が「自明ではない」とされるもの
  • 発明が産業上利用可能であること:製造業、サービス業など様々な産業において製造や利用が可能なもの

となっています。

 

【権利の存続期間や審査】

特許権の存続期間は、特許出願の出願日から 20 年と規定されています。

出願を行った場合、出願後18ヶ月で出願公報が発行され、出願公報の発行後3ヶ月以内に異議申し立てを行うことができます。

さらに、出願後3年(36ヶ月)以内に審査請求が必要となります。

 

さらに、特許の登録後、特許権者もしくは特許の出願人は、特許権や特許出願を維持する場合には定期的に年金支払い期日前の 6ヶ月間の期間に年金を支払うことが求められています。

 

また、上記年金の支払いが行われなかった場合、 年金の遅延支払として、支払い期限満了日後 6ヶ月間は猶予期間として、年金に加え遅延料金を支払うことで特許権の維持ができると定められています。

 

【出願に必要となる情報】

出願の際に求められている情報は以下の通りです。

必須項目
1 特許出願の申請
2 出願人となる個人又は法人・発明者の氏名、国籍及び住所
3 (代理人による出願の場合)代理人の氏名、国民登録証番号及び住所
4 発明の詳細な説明
5 発明の名称及び要約
6 明細書に記載された 1 請求項又は一群の請求項
必要な場合
1 (出願人が重要な産業又は業務を有する場合)国名を含む住所
2 (出願人が機構に出願した場合)登録番号及び機構の種類及び名称
3 (任意)発明を理解しやすくするための図面
4 (出願人が優先権を主張する場合)当該優先権の有効な証拠と優先権の主張
5 (出願人が博覧会優先権を主張する場合)当該博覧会優先権の有効な証拠及び博覧会優先権の主張
6 (共同出願人のうち一人が代表して願書に署名を行う場合)共同出願人の同意書
7 (発明が伝統的知識の合法的使用、又は当該資源の直接的又は間接的な使用である場合(遺伝資源・生物資源を含むか否かに関わらず))宣言書
8 (早期公開請求を要求する場合)公開請求
9 機関及び部局が随時指定した他の追加書類

 

【会社での発明】

会社の業務範囲内での従業者の発明においては、雇用契約書の条項に反しない限りは会社が特許を受けることができます。

その場合、従業者から使用者に対して発明品が完了したという届出書の日付から6ヶ月以内に使用者は特許の出願をする必要があります。

6ヶ月以内に出願を行わなかった場合には発明をした従業者が特許を受けることができます。

また、雇用契約の満了後一年以内に発明されたものについての特許出願をした場合、従業員が業務時間内に発明したことや雇用契約に反しないこと、使用者の指示による発明であること等を証明できれば、期限満了した雇用契約に基づき従業員が発明したものとして会社が申請を行うことができます。

 

【登録の拒絶理由】

特許法14条により、以下の発明は特許をうけることができません。

 

(1) 発見、科学的理論、及び数学的手法

(2) ビジネス、心理的行為、ゲームを行う単なる手法、ルール、又は方法

(3) コンピュータ・プログラム

(4) 非生物学的及び微生物学的な製法を除いた、植物及び動物を生産するために必要な生物学的な製法

(5) 培養され合成された微生物以外の、自然界の生命体、生物学的生命体の全体又は部分、相補的 DNA 配列を含む DNAや、細胞、細胞系、細胞培養、及び種子を含むあらゆる動物及び植物

(6) 人体及び動物に関する実験から得られる診断技術を含む、人体及び動物を手術又は治療する方法

(7) 新規な用途及び新規な特徴を含む自然界に存在する物又は既に公知なもの、並びに、随時調合された化学品及びその発明

(8) 公の秩序若しくは善良の風俗に反し、又は、人間、動物、植物、健康若しくは環境に悪影響を与える発明、並びに、現行の法律の下、連邦の領域内において利用することが禁止されている発明

 

さらに、前述の通りTRIPS協定の履行を前提とした法律として、医薬品や化学物質、食料品などに以下の通り規定がされています。

 

  • 「連邦政府」が特に声明を発表しない限り、「世界貿易機関」のTRIPS 協定に従い、医薬品又はその製造方法に関する発明は 2033 年 1月 1 日まで保護されない。

 

  • 連邦政府が「世界貿易機関」の TRIPS 協定に従い、特別に声明を発表しない限り、次のものは、2021 年 7 月 1 日まで、特許により保護されない発明とされる。

(1) 農業に使用される化学物質

(2) 食料品

(3) 微生物に関する製品

 

また、上記規定の特許が受けられない期間はTRIPS 協定に従い、ミャンマー政府によって変更や指定が行われることもあるとされています。

 

【小発明】

小発明は日本の新実用案に相当し、保護期間は10年間です。

ミャンマー特許法においては「「小発明」とは、有用性又は性能を改良した新規な構造の物の外観若しくは部品、又は物の部分を創造する技術的創作をいう。」と規定されています。

 

【罰則】

権利者の許可なく特許権の侵害行為を行った場合には1 年以下の懲役若しくは 200万チャット以下の罰金またはその両方が

特許権の申請に関する虚偽の発言をした場合には、6 月以下の懲役若しくは 200万チャット以下の罰金またはその両方がそれぞれ課せられるとされています。

 

 

いかがでしたでしょうか。

弊社では進出前のFS調査から会社設立、会計・事務、労務、人事評価制度にいたるまで進出に係るサポートを一貫してご提供しております。設立、設立後についてご質問やご不安などございましたら、お気軽に、下記までご連絡頂ければと思います。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

Tokyo Consulting Firm Co., Ltd (ミャンマー)・ヤンゴン駐在員
西野由花(Nishino Yuka)

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