ミャンマーがついに後発途上国から脱却へ! どんな影響が…?

税務

 

ミンガラーバー、
東京コンサルティンググループ
ミャンマー支社の西野由花(にしの ゆか)です。

 

皆さん、ミャンマーと聞いてどんなことを思い浮かべますか?
軍事政権だった。ロヒンギャ問題がある。
そんなことを考える方もいるかもしれません。
そして、何より「アジアのラストフロンティア」
この言葉に魅力を感じて、ミャンマーへの進出を検討されている方もいるのではないでしょうか。
そのラストフロンティアの名の通り、ミャンマーは発展途上国として毎年大きく変化をしています。インターネットは身近になり、高級ショッピングモールが次々と開業し、法律が毎年変わる…そんな激動のミャンマーですが、ついに! 後発途上国から脱却できるとの見通しが国際連合から発表されました。

 

国連貿易開発会議(UNCTAD)によれば、
ミャンマー、ラオス、バングラデシュがともに後発開発途上国(LDC)の「卒業」要件を満たしたとのことです。
2021年に再度要件を満たせば、2024年に卒業となります。
最貧国と呼ばれてしまうこともある後発開発途上国ですが、こうして国連などの指標をクリアしたというニュースを聞くと、アジアのラストフロンティア・ミャンマーの発展を実感できますね。
しかし、このニュースは単なるミャンマーが発展したことを示すばかりではありません。
このミャンマーという国の立ち位置が変化することは多くの企業にも影響を与えるものとなります。
今回は、後発開発途上とは何なのか、そこから脱却することは企業にどのような影響を与えることになるのか、ということについてお話したいと思います。

 

タイを取り囲むように位置するカンボジア、ラオス、ミャンマー(CLM諸国)は、LDCよして、開発途上国の中でも特に開発が遅れているとされていました。
LDCは、当該国の同意を前提として、

  1. 1人当たり国民総所得(GNI) が1230USドル以上(3年平均)
  2. 人的資源開発の程度を表すための指標(HAI)が66ポイント以上
  3. 外的ショックからの経済的脆弱(ぜいじゃく)性を表すための指標(EVI)が32ポイント未満

の3つの基準において2つ以上が一定値に達しない国が認定されます。
しかし、この認定を受けることで関税の優遇措置や、LDC向けのODAを積極的に受けられるため、企業の進出や外国からの支援に対し、敷居を低くし、経済発展を促せるといったメリットがありました。
つまり、LDCから脱却するということは関税の優遇やLDC向けODAが受けられなくなるということを意味しています。

 

上記3つの基準において、UNCTADが2018年に公表したレビューによってラオス、ミャンマーは2項目以上の達成が確認されました。
これにより2021年までに再度2項目以上の達成が確認されれば、その3年後の2024年に正式にLDC卒業となります。
LDCからの卒業は当該国にとってステータスになる半面、上述のマイナス要素がどれだけミャンマーで活躍する企業に影響を与えるかが注目されています。

 

例えば。CLM諸国は、LDCの関税優遇制度や安価な労働賃金を背景に、「タイプラスワン」の位置付けで労働集約型の生産拠点となっています。
特に、労働集約型の代表的な品目の縫製品ですと、以前の記事でも書かせていただいたように委託加工業に係る原材料輸入の免税政策もあり重要な輸出産業となっています。
このようなミャンマーに限らずCLM諸国で順調に発展してきた縫製品の輸出ですが、LDCとしての関税優遇制度が適用されなくなることの影響は無視できないのではないかと思われます。
ミャンマーの場合GSP-LDCが使えなくなれば、縫製品はTシャツで7.4%など、7~10%以上の関税がかかることになります。

 

日本では1971年8月から一般の関税税率よりも低い税率を適用する特恵関税制度を開発途上国・地域を原産地とする特定の輸入品について導入しています。

この特恵関税制度には「一般特恵関税(GSP)」と「特別特恵関税(GSP-LDC)」があり、CLM諸国をはじめとしたLDC各国からの輸入に対しては、GSP-LDCが採用されています。GSP-LDCはGSPでは特恵関税の対象とならない品目についても広く特恵関税が適用されているので「タイプラスワン」に代表されるような労働集約型企業の大きなメリットとなっていました。
2019年4月1日現在で、128ヶ国5地域が対象となっていますが、そのうちLDCはミャンマーを含む46ヶ国です。

 

最近ではTPP,日EUなどの経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)による自由貿易政策が活発ですが、現在日本とミャンマーはFTAを締結していないため、ミャンマーがLDCを卒業した場合に利用できるのはGSPまたは日ASEAN包括的経済連携協定 (AJCEP)によるEPA特恵関税となります。
しかし、GSP、AJCEPではそれぞれ該当品目の違いや原産地規則のルールなどに細かく違いがあるためにそれぞれで注意するべきことが存在します。

このように複雑さが増す可能性がある一方、ミャンマーの魅力である低コストな労働力に生産効率の上昇が加わることで最終的な生産コストは周辺諸国より抑えることができるのではないかとの見方もあります。
2024年の卒業まであと5年、それまでにミャンマーはさらに発展を遂げインフラの整備や生産性の向上が進んでいくでしょう。ここ、ミャンマーはどうなっていくのか、これからの動向に注目です。

 

また、LDC卒業前後の関税率やGSP、AJCEPの利用に疑問や質問があり方はぜひ弊社にご相談ください。
弊社では進出前のFS調査から会社設立、会計・事務、法務から人事評価制度まで進出に係るサポートを一貫してご提供しております。設立、設立後についてご質問やご不安などございましたら、お気軽に、下記までご連絡頂ければと思います。
また、オフィスへのご訪問もお待ちしております。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 

Tokyo Consulting Firm Co., Ltd (ミャンマー)・ヤンゴン駐在員
西野由花(Nishino Yuka)

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参考
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2018/e895c60096291408.html
https://myanmarjapon.com/newsdigest/2018/05/29-001828.php
https://www.rakuraku-boeki.jp/column/moto_tsuukanshi/2018-12-08

特恵関税とは
https://www.rakuraku-boeki.jp/column/moto_tsuukanshi/2017-02-22

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