カンボジア企業経営への心得

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皆様こんにちは、カンボジア駐在員の澤柳です。             

さて、今回は「後家作り」についてお話しします。

組織の中に、「後家作り」という仕事が生まれることがあります。ドラッカーは、「後家作り」について以下のように説明しています。

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「帆船全盛の頃、いずれの船会社にも『後家づくり』と呼ばれる船が現れたものである。『後家づくり』とは、なぜか死亡事故を起こす船に付けられる名である。船主たちは、そのような船は思い切って解体した。そうしないことには、船長や航海士のほうが辞めていってしまった。
今日では、優秀な者が連続して失敗する仕事が「後家づくり」である。理屈ではよくできた仕事に見える。しかし、実績のある者が二人続けて失敗したならば、そのような仕事は廃止し、仕事の内容を再構成しなければならない。あとになってみれば、どこが悪かったかも明らかになる。
(中略)
通常、「後家づくり」は偶然生まれる。
それは、たまたま一人の人間の中にはなかなか見られない二つの資質を併せもつ者が、うまくこなしてしまったために生まれる。当然のことと思われていた仕事が、属人的な偶然の産物だった。それでは同一の資質の者を探すことは不可能である。  肩書の多用と「後家づくり」の仕事の発生は、マネジメントの仕事と構造に関する古くからのある問題と密接な関係にある。
組織構造は、仕事を人に合わせるか、それとも人を仕事に合わせるかという問題である。よく指摘されるように、これは問題の設定の仕方が間違っている。当然のことながら、人が仕事に就く。したがって、仕事は人に合ったものでなければならない。
われわれは仕事を、人に合わせ人のニーズに応え、人の期待に沿うものとして設計しなければならない。事実われわれは、今後、そのようにするための努力の一環として、特に大企業ではマネジメント開発の発展を見ることになる。
しかし、他方、組織構造が人中心でなく、仕事中心でなければならないことも明らかである。さもなければ、継続性は失われ、仕事の引継ぎは不可能となる。

仕事を人中心に設計したのでは、人事異動の都度、仕事の再構築が必要となる。多少なりともマネジメントの経験のある者ならば知っているように、1つの仕事だけを再構築することは不可能である。必ずドミノ倒しの連鎖反応が起こる。一つの仕事をいじるならば、多くの仕事をいじり、多くの人を動かし、多くの人に影響を与える」
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組織の中に「後家作り」という仕事が生まれていることがあります。
上記のようにいくつかのスキルを持っている人材がたまたまそのスキルを活かせる職場に配属されることで起こるのです。

最初は、単なる普通の業務ですが、その成長過程で、いくつかの関連業務をまとめ上げて一つの業務としてこなしてしまいます。本人は、労なく仕事をしているため、誰でもができると思っているます。当の本人は「後家作り」なんて意識はさらさらないのです。

人事異動でその業務を他の者に引き継ぎを行うことなりますが、その業務を後継者に引き継ぎ行うときに「後家作り」が顕在化してしまいます。引き継ぐ側は、特に問題意識もなく引き継業務を行います。しかし、引き継いだ者は、当然そのような芸当はできないし、やってみる気も起らないでしょう。

このような状況に遭遇した場合には、その業務をその特徴ごとに分解し、新たな体制を構築するか、それぞれ近い業務を行っている組織に吸収ざせるしか方法はありません。

 

澤柳 匠

 

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