カンボジアとEBA制度

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皆様こんにちは、カンボジア駐在員の西山です。
今回は「カンボジアとEBA制度」についてお話しします。

 

2019年8月15日、カンボジア衣料製造業協会(Garment Manufacturers Association in Cambodia:GMAC)は、75万人のカンボジア人労働者の生計と約300万人の福祉が危機に瀕しているとして、欧州連合(EU)に対し武器以外全て関税特恵プログラム(Everything But Arms:EBA)の継続を要請したと発表しました。

以下、GMACの発表文になります。

 

EUは2019年2月、カンボジア政府による人権侵害や労働権侵害の疑いに対する調査を開始し、この調査の結果によっては、カンボジアがEBA制度の対象国から除外される可能性があります。EBAは、武器以外の全品目(数量制限なし)のEU域内への輸入関税を撤廃する制度であり、調査の結論は2020年2月に発表されると見込まれています。

 

カンボジアは2001年以降EBAの恩恵を受けており、主な受益者は衣料、履物、旅行用品産業で働く労働者です。この産業はカンボジアの全製品輸出の約75%、カンボジアのEU向け輸出の90%を占めて、2018年の貿易額は47億7000万ユーロとなり、EBAが適用されて以来、10倍に増加しています。

 

EBAによるEUからの支援はカンボジアの経済的および社会的発展に大きく貢献してきました。縫製業75万人の労働者は、カンボジアの総正規労働力の半分以上を占め、全世帯の20%以上に直接の収入支援を提供しています。労働者の80%以上は女性で、ほとんどが35歳未満となっています。EBAはカンボジアの約300万人の生活にプラスの影響を与えているとみられています。

 

GMACは、労働コンプライアンスと労働条件における透明性と説明責任を確立し、これらの価値を尊重してEU当局に詳細な情報を提出しています。カンボジアモデルとして知られるようになったこのモデルでは、GMACは国連の国際労働機関(ILO)が国内および国際労働法の順守に関し工場を査察することを歓迎した世界初の協会となりました。Better Factories Cambodia(BFC)として知られるこのプログラムは、それ以来ILOにより他の国々での査察に採用され、EU市場への優先的アクセスの恩恵を受ける国として、カンボジアほど透明性とILOとの積極的な協力の一貫した実績がある国はありません。

 

BFCプログラムの下で、ILOはすべての衣服、履物、旅行用品の輸出工場の厳格な年次評価を実施し、結社の自由、団体交渉、児童労働、強制労働、差別禁止、賃金・福利厚生、労働安全・衛生に関する要件を含む労働者の権利と労働基準のすべてにおいてコンプライアンスについて報告しており、評価の結果は公開されています。

 

GMACはEUの懸念に対応し、国内法およびILO基準に関する産業の進捗とコンプライアンス記録を示すための裏付けとなる証拠を提出しました。

GMACは、EBA便益が停止されれば、衣料、履物、旅行用品業界での大規模な雇用喪失につながり、貧困撲滅および持続可能な開発というEBAプログラムの目的に貢献しないことを再度強調し、ILOと協力しカンボジアならびに他の国々で労働者の権利を監視する役割の促進に協力してきたGMACとその労働力にとって、残念な結果をもたらすことになります。

 

今週は以上になります。
ご不明な点などがありましたら、お気軽にご連絡下さい。

 

 

株式会社東京コンサルティングファーム カンボジア拠点
西山 翔太郎

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