【2019年 8月特別号】TCFカンボジアニュースレター

ニュースレター

 

皆様こんにちは、東京コンサルティングファーム、カンボジア法人の西山です。

今回は、就業規則レビューについてご案内いたします。

 

昨今日系企業経営者の間では、カンボジア従業員に対する懸念が尽きないと思います。低調なパフォーマンス、頭を抱える遅刻・欠勤率、利益を食い潰す残業代、改善の兆しが見られない態度等々、経営者の頭を悩ませる種は枚挙に暇がありません。

 

しかし、こういった従業員から会社を守るために、減給を考えたり、解雇を考えたりするためには、正当な就業規則や評価制度がなければなりません。

そこで、今回はカンボジアにおける就業規則に関わる規定等についてお伝えしたいと思います。

 

1.就業規則の規定と作成義務

日本では、10人以上の労働者を雇用する場合に作成義務が生じますが、カンボジアでは労働法第22条において、8人以上の労働者の雇用する場合に作成義務が発生すると規定されています。8人未満の場合は就業規則を整備する必要がありませんが、就業規則を作成・登録することは可能です。時々8人未満でも登録可能という事実を知らない労働監査官によって、登録申請が拒否されるケースもありますが、法律上は登録可能です。

 

また、日本での「10人以上」の基準が、大抵、「事業所」単位で判断されると考えられていますが、カンボジアでは、「企業」単位でも「事業所」単位でも、どちらにおいても8人以上となっていれば、作成義務があります。

2.政府への承認申請

カンボジアの就業規則の作成と労働監査官の承認の手順は以下のようになっています。

 

  1. 企主は、従業員の代表との協議の上、企業の設立もしくは8人以上の従業員を雇用するに至った日から3カ月以内に就業規則を作成しなければならない。
  2. 就業規則は、労働監査官により承認を受けた後、有効となる。
  3. 就業規則の提出を受けた労働監査官は60日以内に就業規則を承認しなければならない。
  4. 就業規則は従業員に配布され、容易に目にすることができる場所に掲示しなければならない。

 

実務上、就業規則作成および承認には、大きく分けて 2 通りの方法が存在します。

  1. 自社もしくは関連会社が保有する就業規則をカンボジア労働法に準拠させた就業規則を自社で作成し、労働監督官の承認を受ける方法
  2. 労働省の就業規則モデルを参考に就業規則を作成し、労働監督官の承認を受ける方法

 

労働監督官の承認を受けるためには、「b」の方法の方が容易であるため、「b」の方法を選択する企業が多くなっていますが、労働省のモデルをそのまま使用しているため、自社の方針に整合していない、内容自体を把握していない等のケースが散見されます。

 

就業規則は、労働法や省令等と矛盾する内容を含むことはできず(第25条)、不備等があると承認が下りませんのでご注意ください。労働監督官が矛盾や労働法等を下回る規定を見逃し承認を受けた場合でも、労働者の訴えにより就業規則の規定が無効とされ、労働法等の規定が適用されます。また、外国人であっても現地で雇用契約されていれば、就業規則が適用されることになります。

 

一般的に、就業規則に記載すべき事項としては、下記の通りになります。

 

  • 採用条件や採用前手続き
  • 労働者の身上に変更があった場合の手続き方法
  • 訓練に関する規定
  • 試用期間に関する規定
  • 業務方法
  • 採用時及び採用後の健康診断に関する規定
  • 労働時間(休憩含む)に関する規定
  • 深夜労働と時間外労働に関する規定
  • 休日に関する規定
  • 年間休日、祝日の休み、特別休暇に関する規定
  • 女性労働者の出産休暇に関する規定
  • 傷病休暇に関する規定
  • 労働災害での休業に関する規定
  • 給与、賞与、現物支給、その他の手当の決定、支払、減額
  • 欠勤に関する規定
  • 正式な許可のある休暇に関する規定
  • 休暇許可のない欠勤に関する規定
  • 勤務中の備品などの利用に関する規定
  • 企業・機関の建物、場所の利用に関する規定
  • 企業敷地内の出入りに関する規定
  • 規則違反あるいは重大な違反行為を犯した場合の労働者への処罰
  • 処罰に当たる前の労働者の権利
  • 業務上の衛生、安全に関する命令および対策
  • 記の命令、対策を守るための労働者の順守義務
  • 業務によるノイローゼおよび労働災害の予防

 

3.就業規則作成の流れ

形態に応じた就業規則があることによって、懲戒処分などをする際の根拠として有効です。一方で労働者も各企業で就職した際に、自分の責任範囲の確認ができます。又、例えば、企業の給与の支払いが就業規則に則していなければ、訴えることもできます。

 

就業規則作成は以下のような流れで進めていくのが望ましいでしょう。

 

導入

定義や用語、目的などに関して

就業関係

採用や昇格、降格などに関して

就業時間

出勤簿、欠勤、時間外出勤などに関して

休暇

有給休暇やその他特別休暇などに関して

手当・福利厚生、

給与制度および手当などに関して

処罰

従業員の義務及び処罰などに関して

雇用解除

一般定義、雇用解除の条件、退職金などについて

結び

苦情申したて、有効期限、規定と締結などに関して

 

4.従業員の解雇

カンボジアにおいて、従業員の解雇が難しいと苦悩される方が後を絶えません。いつまでもあがらないパフォーマンス、多すぎる遅刻、欠勤の回数、そのすべてを棚に上げて叫ばれる昇給要望の数々。ましてや窃盗や横領など、重大な過失、犯罪行為等に手を染めた従業員など即刻解雇したい!と思われる日系企業様も多いのではないでしょうか。そこで一点ご注意いただきたいのが、労働法第26条の存在です。

 

労働法第26条では、重大な契約違反(重大な企業秩序遵守義務違反)を理由とする労働契約の解除は、同違反が判明してから 7 日以内に行われなければならないと規定されています。この期限を過ぎると、一方的な解雇とみなされ、損害賠償責任が発生する可能性があるので、ご注意ください。

 

5.終わりに~バランススコアカード~

企業経営には4つの重要な視点が存在すると言われています。その4つとは、財務、顧客、プロセス、組織であり、この考え方はロバート・S・キャプラン(ハーバード・ビジネス・スクール教授)とデビッド・ノートン(コンサルタント会社社長)が1992年に「Harvard Business Review」誌上に発表した業績評価システム、BSC:バランススコアカードに基づいています。

 

企業の恒常的な活動の「結果」は、財務の視点に現れます。財務諸表の数字には営業、事務、購買などのあらゆる活動結果が含まれています。そして、顧客の視点、プロセスの視点において、売上に関する業績、生産性に関する業績を細かく見ていくことになります。しかし、「ビジネスは人」と言われるように、企業活動による結果に対する「原因」は、人、すなわち組織の視点に集約されることになります。

 

カンボジアに限らず、在外子会社をお持ちの日系企業様は就業規則、賃金規定、評価制度を確立していくことが重要です。文化の違い、言語の違い、宗教の違いなど、これらのコミュニケーションバリアの元となる要素に振り回され、いつまでもローカライゼーションが進まない、といった企業様は、賃金の支払規定や年功補償など、労働規則が大きく変わったこのタイミングで、一度自社の就業規則を見直す、また未作成の場合は基礎から作りこんでみてはいかがでしょうか。

 

弊社は、カンボジアでの人事労務に関するご相談は受け付けておりますので、お悩みの方は下記までお気軽にご連絡ください。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 

株式会社東京コンサルティングファーム カンボジア拠点
西山 翔太郎

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