■カンボジア企業経営への心得■金融商品その1

その他

■カンボジア企業経営への心得

皆様こんにちは、カンボジア駐在員の澤柳です。今回も前回に続き会計リスクについてお話しいたします。

会計リスクに対応するためには、仕組みの構築、そしてその仕組みの実行力をあげることが必要です。それでは、仕組みの実行力はどのようにすれば上げられるのでしょうか。

実行力を上げるためにまず思いつくのは、個人のモチベーションや意識を変えることです。従業員の意識の話は以前のブログでも取り上げていますし、会社として重きをおく必要はあります。しかし、それだけでは「適切な」実行力を上げることはできません。

既にある仕組みを適切に実行する力が会計リスク管理には重要であり、担当する人が変わったら機能しなくなってしまう仕組み運営は非常に問題と言えます。

私が推奨する実行力を上げる方法は、以下の通りです。

  1. 実行力向上のポイントは、有限な人・時間・情報等を如何に重要なプロセスに使うか(選択と集中)。

a)       実行すべきプロセスの分類、整理、集約。

b)       固有リスクと残余リスクを知る。(残余リスク:プロセスが終了した後もなお残るリスク)

c)       プロセスの優先順位づけ。

  1. レポーティングラインを整備。
  2. 仕組みの日常的モニタリングと独立的モニタリングによる実行力の維持、改善。

まずはじめに取りかかるべきは、現在ある有限な人、時間、情報などの経営資源を把握し、重要なプロセスに配分することです。

実行力向上の鍵は、9割の企業にとっては「時間」です。会計データの正確性を追求するあまり、すべての経理プロセスに同じように時間を使ってしまい、その結果、経理スタッフが毎日の忙しさから適切に会計の仕組みを実行できなくなっています。

そこで、仕組みの構築の際に網羅的に把握した経理プロセスを分類、整理、集約し、それぞれのリスクを把握、そしてリスクに応じたプロセスの優先順位付けを行います。

ここでのリスクは、固有リスクと残余リスクに分かれます。固有リスクとは、もともとそのプロセスに紐付いているリスク(仕組み構築の際に確認したリスク)、そして残余リスクとはプロセスを実行し、コントロールを行った後もまだ残っているリスクです。

固有リスクが高いもの、そして残余リスクが高いものも同様に重要性が高いと認識でき、それらのプロセス実行の優先順位を上げる必要があります。

プロセスの優先順位付けができたら、今度はその報告経路(レポーティングライン)を整備してあげ、実行されたプロセスの情報が部門内、部門間、経営層までに適切に流れるようにします。そうすることで、情報をわざわざ取りにいくのではなく、必要な情報が必要な時に必要な場所に届くようになりますし、素早い経営判断が可能となります。

そして最後に、モニタリング機能を作ります。重要と識別されたプロセスが常に実行されているか、実行が適切であるか、現在のリスク評価に変更はないかを随時モニタリングし、実行力を落とさないようにしておく必要があります。

 

 

■金融商品その1

皆様こんにちは、東京コンサルティングファームカンボジアの公認会計士の熊谷と申します。

今回のIFRS分野の記事は、金融商品についてご説明したいと思います。金融商品についてはIAS32号「金融商品:表示」IAS39号「金融商品:認識及び測定」IFRS7号「金融商品:開示」IFRS第9号「金融商品」にて規定されています。

金融商品の分野は内容が膨大ですので、少しずつご説明させていただければと思います。今回は金融資産です。

金融資産とは、現金預金受取手形売掛金及び貸付金等の金銭債権株式その他の出資証券及び公社債等の有価証券並びに先物取引先渡取引オプション取引スワップ取引及びこれらに類似する取引により生じる正味の債権等をいいます。

金融資産は主に期末の評価がポイントになります。

ü  現金預金は、価値の変動がないですので、特に処理はしません。外貨建の場合は為替の影響を反映する必要があり、以下の処理を行います(他の科目も同じ)。

(借) 現金預金         ××× (貸) 為替差益       ×××

                    OR

(借) 為替差損         ××× (貸) 現金預金       ×××

 

ü  受取手形

特に価値の変動はないので仕訳は必要ありません。

 

ü  売掛金・貸付金

特に価値の変動はないので仕訳は必要ありません。

 

しかしながら、受取手形・売掛金・貸付金に関しては、貸倒引当金を設定するかどうかに関して検討することが必要です。貸倒引当金とは、得意先の倒産等により将来金融資産の回収が見込めなくなった部分に関して前もって見積もり費用計上をする際の相手科目を指します。

IFRSでは貸倒引当金の計上に関して、金融商品の減損として捉えています。日本基準とは異なる考え方です。減損損失の測定の一般原則は以下の通りです。

★減損発生の客観的な証拠がある場合には、資産の帳簿価額を、見積将来キャッシュフローを当該金融資産の当初実効金利で割り引いた現在価値まで減額しなければならない。ただし、短期の受取債権について、割引による影響に重要性がない場合、割引計算は行わない。また、実務上の簡便法として、公正価値(客観的に観察可能な市場価値)を用いることも認められる。

また以下のような規定もあります。

★金融資産が信用状態の悪化等により減損している場合に、その減損額を帳簿価額から直接減額するのではなく、貸倒引当金等の独立した勘定科目を用いて控除している場合は、金融資産の種類別に当期中の当該勘定の変動の調整表を開示しなければならない。

このことから考えれば、貸倒引当金はIFRSでは使用しないわけではなさそうですが、直接減額処理が原則的な方法であると考えられます。また計上基準も日本基準とはまた異なり、「減損発生の客観的な証拠」が必要になります。

減損処理は以下の仕訳です。

  (借) 減損損失     ×××    (貸) 受取手形   ×××

                          売掛金    ×××

                          貸付金    ×××

 

次回のIFRS分野の記事では、有価証券の処理に関してご説明いたします。以上です。

   

 

 

 

関連記事

ページ上部へ戻る