トルコのM&A情勢について

こんにちは、トルコ駐在員の高津です。

 

今週はトルコのM&A情勢についてです。

 

近年、トルコの経済発展は目覚ましく、以前に比べインフラ、労働力等の投資環境が整備されているうえ、EU圏や中東などと隣接しているため、外国企業の一大集積地となっています。また、その優位性を活かすため、多くの外国企業がトルコ企業に対し、M&A取引を検討するようになりました。

しかし、トルコにおけるM&A取引件数はまだ多くはありません。次のグラフは、1999~2013年の間に、トルコで行われたM&Aのうち、公表されている件数と金額を表したものです。2013年の総M&A件数は約350件となっており、公表されている先進国の総M&A件数(アメリカで約1万件、イギリスで約3,000件、日本で約1,800件)と比較すると、かなり少ないといえます。リーマン・ショックのあった2008年までは増加傾向にありましたが、その後、件数、金額ともに大きく減少し、2012年以降、再度増加する傾向にあります。

 

 

■日本企業のM&A事例

日本企業による中東企業の買収(In-Out)の件数は、2011年に6件、2012年に4件、2013年に10件あり、そのうちトルコに対するM&Aは、それぞれ2件、4件、7件です(レコフ調べ)。

日本から世界へのM&Aの件数が2013年で499件あることを考えると、日本企業のM&Aによるトルコへの進出は、まだまだ一般的であるとはいえません。

日本企業のトルコ進出が本格的に始まったのは、1980年代後半に遡ります。製造業のプロジェクトとしては、1986年にいすゞ自動車のトラック生産(現地アナドル社、いすゞ自動車、伊藤忠商事)、1987年にカゴメのトマト加工品製造(現地TAT社、カゴメ、住友商事)、1988年にブリヂストンのタイヤ製造(現地サバンジグループとの合弁)、1990年にトヨタ自動車の乗用車生産(サバンジグループ、トヨタ、三井物産)、1991年に吉田工業のファスナー製造、オムロンの電子機器製造などがあります。1997年には矢崎総業の自動車用ワイヤーハーネス製造工場(サバンジグループとの合弁)が操業を開始し、ホンダの乗用車製造(アナドル・グループとの合弁)、同二輪車製造も始まりました。

外務省の海外在留邦人統計によると、2013年10月1日現在、日系現地法人は駐在員事務所を含め121社であり、内訳は現地法人(100%出資)50社、合弁会社17社、個人企業9社、支店21社、駐在員事務所24社となっています。

トルコと日本との共通点は地震国と資源小国であることです。今後ますます耐震技術と省エネ技術での寄与が予測されます。

近年、ビジネスでの日本の投資は全体構成比の5%程度に留まっていますが、2010年のトルコのジャパン・イヤーに前後して医薬品、食品、家電、運輸、飲食業、その他製品のサービス支援などの分野で新規市場進出が目立ちます。自動車などの輸送機器分野は、トルコをEU向け輸出の生産拠点としてプラント設備の拡充整備を図り、生産能力を増強しています。

 

高津 幸城

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