ラオス非公開会社設立に関して

お世話になっております。
TCFタイ兼ラオスの高橋です。

今週は、日系の進出形態で最も多い非公開会社に関して記載していきたいと思います。
日系企業がラオスに拠点を設ける際に、最も多く採用されている非公開会社を例に、設立手続を説明します。

非公開会社の設立手続

■日本側の手続
まずは、日本側で、株主構成や資本金、会社の役員などの必要情報を決定したうえで、設立に必要な書類をそろえなければなりません。ラオスの場合、現地での申請手続はそこまで手数が多くありませんので、日本側の手続を如何にスムーズに進めることができるかがポイントとなります。

I.現地法人情報の決定

[発起人の決定]
会社の発起人は、最低2名以上となります(86条)。発起人は会社の設立手続を遂行する者であり、設立時株式のうち1株以上を保有しなければなりません(87条)。発起人は、以下の行為について、株主に対して法的責任を負います(88条)。

個人的な利益のための活動
会社の設立に関連して発生した隠匿収入・費用
有限会社設立の目的外の契約を行うこと
実際の価格を超えて資産を評価すること
その他法律で規定されるもの

発起人は、有限会社の設立に関連する第三者との契約締結、または、承認されていない費用の支出、または、承認されているが会社に登録されていない費用の支出について、無限責任を負わなければなりません(89条)。
公開会社の場合、最低9名の発起人が必要であり(179条)、公開会社の発起人は、下記の要件を満たした自然人または法人でなければなりません(180条)。

•法的能力を有すること
•事業活動が制限された期間内にある破産者でないこと
•資産の横領や流用の有罪判決を受けていないこと
•共同で最低資本金の少なくとも10%に相当する株式を保有すること

[商号について]
企業法によると、商号に使用できないものが、以下のように定められています。

使用禁止の商号(22条)
混乱を引き起こす商号、他企業と同じ商号
国の文化、伝統と矛盾する商号
国名、国際機関または文化的アイデンティティや宗教のシンボルを含む商号
他企業のと同一あるいは類似の商号

[資本金について]
一般事業における最低資本金は、駐在員事務所設立を除き、10億キープ(約10万ドル)以上となります(投資奨励法17条)。一方、コンセッション事業の場合は総投資額の30%以上必要となります(投資奨励法12条)。
この最低資本金は事業実施中の最低維持すべき財産額をも意味しており、事業実施中に財産総額が資本金を下回ることができません(投資奨励法12条)。

[会社の機関設計]
会社を設立する場合、ラオスの企業法に基づいた会社の機関設計を行う必要があり、どのような人を選任するかがポイントとなります。最も簡素な設計をする場合には、株主、取締役、会計監査人を検討しなければなりません。
株主は、1名以上いれば会社を設立することができます(1名の場合は、1人会社、2名以上の場合は非公開会社として登記されます)。ただし、発起人が2名以上必要であることから、設立時は2名以上、1株を引き受ける者を用意しておかなければなりません。
取締役は、1名以上いればよく、国籍や居住性の要件もないため、タイと兼任で代表取締役を選任するケースも多いようです。
最後に会計監査人ですが、総資産が500億キープ以上(約500万ドル)の会社には、設置が義務付けられています。この場合には、ラオスの公認会計士を選任する必要があります。

II.必要書類の準備

•親会社の印鑑証明書(発行から3カ月以内のもの)
•親会社の登記簿謄本(発行から3カ月以内のもの)
•株主及び取締役のパスポート及び身分証明書の写し、証明写真
•株主の銀行口座残高証明書
•公証取得のための公証委任状
•現地代理人への設立委任状

[新会社の定款]
ラオスの場合、定款には、基本定款と付属定款の2種類があります。基本定款は会社の基本事項を記載しておくものであり、付属定款は、配当や株主総会の運営方法など、運営上のルールを決めるものです。作成した定款は株主の代表者によって署名されなければなりません。
それぞれの記載事項を以下にまとめました。

[必要書類の公証、認証]
上記の書類のうち、代理人への設立委任状を英語で作成し、公証役場での認証、ラオス領事館での認証処理を行います。

III.準備書類の送付
上記にて、認証処理が終了次第、これら書類をラオスへ送り、後述のプロセスはすべてラオスにて行うことになります。

■現地側の手続
現地における手続きの流れは以下のとおりとなります。

① 商号の予約・取得
会社は設立において、商工業省(MoIC:Ministry of Industry and Commerce)の事業登録事務所(ERO:Enterprise Registry Office)から名前の予約証明書を取得する必要があります。
商号の予約証明書取得のために希望される名前を3つと署名済み定款をEROにて提出します。商号は予約してから1営業日で取得することができます。手数料として1万キープがかかります。

②企業登録証明書の申請・取得
会社の発起人は、商工省国内商務局(Enterprise Registry Office in the Domestic Commerce Department, Ministry of Industry and Commerce)の事業登録事務所(Enterprise Registry Office)に必要書類を提出し、企業登録証明書の申請を行います。
申請に必要な書類は以下の通りになります。

•投資申請書
•申請書の付属書
•新会社の定款
•事業計画
•合弁契約書(合弁会社の場合)
•投資家の履歴書、パスポートの写し、3x4cmの証明写真
•親会社の銀行残高証明書
•代理人への委任状

各部門において、技術的または実質的な検査のために時間を必要とする事業を除いて10営業日以内に裁決されます。その後、3営業日以内に事業登録事務所により企業登録証明書を発行する決定が行われます(14条)。料金に関しては、申請料及び登録料で380,000キープになります。

③ 税務登録証明書の申請・取得
企業登録証明書を申請し、許可がおりた場合、税務登録証明書を申請します。
申請に必要な書類は以下の通りになります。

•期首バランスシート
•税務登録申請書
•投資許可証の写し
•企業登録証明書の写し
•親会社の銀行残高証明書
•会社に雇用されている従業員のリスト

企業は、税務登録証明書を取得し、毎年更新する必要があります。更新手数料は会社の年間売上により、年間売上高58,000ドル以下の企業は、100,000キープ、それ以上は150,000キープとなります。なお、出願料は25,000キープです。

④ 設立完了/営業開
企業登録証明書は、投資許可、奨励優遇、税務登録、関係機関による事業許可を含み、合法的に事業を実施するための企業登録の承認書類です(投資奨励法19条)。投資家は、企業登録証及び税務登録証明書を受理した後に、事業を開始することができます。

⑤ 銀行口座開設・資本金払込
日系企業の多くが、国営銀行であるBanque pour le Commerce Exterieur Lao(BCEL)を利用しているため、ここではBCELでの口座開設を説明します。
銀行口座はLAK(キープ)、BAHT(バーツ)、USD(米ドル)口座の3種類を利用でき、通貨ごとに利率が異なります(「Banque Pour Le Commerce Exierieur Lao ( BCEL )」のホームページを参照)。口座開設の際は、以下の書類が必要になります。
銀行口座開設に必要な書類は以下の通りです。

•口座開設申請書
•企業登録証明書
•税務登録証明書
•投資許可証
•代表者(サイン権者)のパスポート

銀行口座開設時のデポジットは通貨ごとに異なり50万キープ、2万バーツ、500ドルとなります。預金の最小預入額は通貨ごとに異なり、普通預金口座の場合10万キープ、1,000バーツ、50ドルとなります。
なお、外国投資企業は、設立日より60営業日以内に最低資本金の20%を払込み、事業開始から2年以内に残金を振り込むことができます(投資奨励法施行細則(2005)第32条第32.1項)。もちろん、最初の時点で全額を支払うことも可能です。

⑥ 会社印の承認・作成
会社は会社印を作る前に、情報文化省(Ministry of Information and Culture)へ申請し、承認を得なければなりません。手数料は、印の種類に応じて、1平方センチメートルあたり1万キープです。また、承認取得まで5営業日が必要となります。
ラオスでは他国と比べて会社印の承認がおりてから作成し使用できるまで45日間かかることが特徴的です。まず、The Ministry of Industry and Commerce (MoIC)にて印鑑デザインの決定を受け、Ministry of Public Security (MoPS)にて印鑑作成の許可を取得することから始まります。その後に印鑑作成を申請し、作成された印鑑をLocal Level Public Security Officeから使用する許可を取得することによって印鑑作成の手続が完了します。
会社印の申請に必要な書類は以下の通りになります。

•投資許可証の写し
•企業登録証明書の写し
•税務登録証明書の写し

この流れに約45日がかかり、ラオス語での印鑑の場合120,000キープ、その他の場合は123,000キープの料金がかかります。
上記の非公開会社の設立手続は、一般的には全体を通じて約4カ月半で完了します。具体的には、会社設立の手続開始から事業開始までの期間は約1カ月半、その後の手続は約2カ月かかります。

参考資料①

以上、弊社ではラオスビジネスにおいて進出サポートから設立後業務まで一貫してサポート可能でございます。
何かご質問等ありましたら、ご連絡頂ければと存じます。

 

 

 

 

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