シンガポール雇用法改正!ポイントその2「祝日」

来年2019年4月1日より、シンガポール雇用法(Employment Act)が改正されます。

 

一番の変更点は、これまでシンガポール雇用法の対象外であった月給S$4,500以上の従業員、一般にPMET(Professionals, Managers, Executives and Technicians)と呼ばれる専門職・経営者層の従業員に対しても、一律法律が適用になるという点です。

 

給与がS$4,500を超えているというだけで一切保護が与えられないのでは労働条件が厳しすぎるということで、就業時間の指定と残業代支給を義務付ける第4部(Part IV)を除いて、一般的に雇用法が適用されることになったと理解することができます。

 

これにより拡大されるのは、主に以下の保護を受ける従業員です:

・年休(Annual Leave):最低7日~14日

・祝日(Public Holidays):働かなくても勤務した扱いの日として補償

・病気休暇(Sick Leave):通院・入院が必要な場合に、診断書が出れば有給休暇がとれる

・給料日(Pay Day):給与計算期間の締め日から7日以前の支給が必要

 

今週はこのうち、2番目の「祝日」についてまとめます。

 

シンガポールの祝日って何日あるの?

 

シンガポールの祝日は年間11日です。毎年の具体的な休日についての情報は、政府系サイトに公開情報として明記されています。

例えば、2019年は以下のようになっています:

New Year’s Day(新年) 1月1日 火曜日
Chinese New Year(中国新年) 2月5~6日 火~水曜日
Good Friday(聖金曜日) 4月19日 金曜日
Labour Day(メーデー) 5月1日 水曜日
Vesak Day(ウェーサク祭) 5月19日 日曜日
Hari Raya Puasa(断食明け祭) 6月5日 水曜日
National Day(建国記念日) 8月9日 金曜日
Hari Raya Haji(犠牲祭) 8月11日 日曜日
Deepavali(ヒンドゥー新年) 10月27日 日曜日
Christmas Day(クリスマス) 12月25日 水曜日

※日曜日など従業員の休息日(Rest Day)に当たる場合は翌日月曜が祝日となる

 

民族や宗教に起源をもつ祝日がほとんどですが、どの民族・宗教コミュニティーに属していても一律休日とされる点がシンガポールの特徴です。

 

また、半数の祝日が各コミュニティー独自の暦に基づいて設定されるため、毎年日付が異なるという点にも注意が必要です。

 

シンガポール政府は毎年4月には翌年の祝日カレンダーをアップするので、正確な日付はサイトにアクセスしてチェックしましょう。

参考(労働省サイト):https://www.mom.gov.sg/employment-practices/public-holidays

 

働いてはいけないの?

 

日本同様、シンガポールでも、祝日の日にすべての店や会社が閉まってしまうわけではありません。

むしろ、社会人が休日を取るのに合わせて、ここぞ書き入れ時と出勤者を増やす必要のある業界もあることでしょう。

その場合は、祝日に出勤するということが会社から依頼されることになります。

 

祝日が平日に当たるか、休日に当たるかで、対応が以下のように異なってきます:

祝日がどの日に当たるか 会社側対応
平日に当たり、勤務する場合 ·         通常勤務としてその日の給与を支給

·         加えて基本給レートで1日分を支給

土曜など代休(Non-Working Day)に当たり、勤務する場合 ·         その日は毎時間残業代として計算し残業代を支給

·         加えて代休を付与、または基本給レートで1日分を支給

休息日(Rest Day)に当たり、勤務する場合 ·         通常勤務としてその日の給与を支給

·         加えて翌平日を有給休暇とする

 

また、雇用法第4部の保護を受ける従業員については、祝日に勤務した時間が半日以内か、半日は超えるが通常勤務時間以内か、同時間を超えるかによって、適用レートなどが変更になります。

基本給によってその日の給与が決まりますが、計算が複雑になるため、自動計算される給与計算ソフトを利用したり、労働省MOMが公開する計算サイトを利用して計算する会社も多くみられます。

 

参考(MOMサイト):https://www.mom.gov.sg/employment-practices/salary/calculate-public-holiday-pay

 

祝日ってどんな日?基本的な考え方はコレ

なぜ上のようなややこしい計算になるのか、基本的な考え方をおさえて理解しましょう。

まず、シンガポール政府は、すべての人は週に1日休息日(Rest Day)を享受すべきだ、という考えに立っています。これは、日曜日でなくとも構いません。

 

この休息日は、丸一日仕事を行わない時間を設けるというものであり、週休二日制であるか否かによらず、各人1日だけ設定するよう求められる休日です。

※シフトワーカーについては毎週固定でない場合も出てきますが、必ず30時間は休みが確保されるように設定しなければなりません。

 

この休息日を除いた6日間を、平日とします。

全日・半日休日になることの多い土曜日など、休息日以外の休日については、シンガポールではほかの日に勤務時間を確保したために得られた代休(Non-Working Day)として認識されます。

 

そして祝日は、シンガポールで活動する会社は、従業員の労働時間を、催事というコミュニティーの義務を果たすことに使わせるべきである、という考え方で設定されています。

 

つまり、平日の場合はその勤務時間について、会社のためには働いていないけれども働いたことにして給与を支給しなければならない勤務日(Working Day)という扱いにしているのです。

 

したがって、祝日が土曜日など代休(Non-Working Day)に当たる場合は、催事のための全日勤務時間を使わせたことにするのですから、その8時間分はまた別の日に代休を取らせて調節するか、1日分給与を与えて調整されなければなりません。

 

また、祝日が日曜日など休息日(Rest Day)に当たる場合は、本来働いてはならない日に催事のための全日勤務時間を使わせるのですから、休息日でない翌日と入れ替えて、月曜日などを祝日=有給休暇となる代休とせねばなりません。

 

また、給与計算の際にも、祝日および祝日の代わりに与えられた代休は平日、全日勤務した扱いにする必要があります。

特に無給休暇を取った従業員の月給を計算するような場合には勤務日数の計算を誤らないよう注意しましょう。

 

ただし、上記休息日は、雇用法第4部(Part IV)で規定されるされるものであり、月給S$2,500超え(雇用法改正後はS$2,600超え)の従業員に対しては、その扱いを土曜など代休(Non-Working Day)と同じに設定することができます。

 

したがって、第4部に保護されない従業員が祝日に勤務した場合には、有給休暇である代休を与える意味で、年休を1日増やせば、別途手当を支給する必要はありません。

 

変わったのはどこ?

 

雇用法改正に話を戻します。

結局変わったのは、上記祝日の考え方をすべての従業員に適用する必要が出てきた、という点に尽きます。

具体的には、すべての従業員に関して、以下の対応をするということです。(雇用法第4部の保護対象を除く)

・祝日が平日に当たった場合は休暇とする

・祝日が休日に当たった場合は1日有給休暇を与える

・祝日に働かせた場合には1日有給休暇を与える

 

そもそもこれまでは、残業のために土曜・日曜出勤をしたとしても、月給S$4,500超えのPMETは残業代すら支払われず、それが祝日に変わったところで同じでした。

PMETの給与は会社の業績によってのみ決められるべき、という考え方です。

 

しかし、残業時間を減少させて健全な労働環境を創造し、生産性の高い働き方で国内の生活の質(Quality of Life)を向上させようというのがシンガポールの意向です。

 

残業代の支払いを約束する必要はまだなくとも、残業時間を計算して代休を与える仕組み、祝日があるたびに有給休暇の付与を検討する仕組みが設けられるべきだといえます。

 

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