【労働裁判】労働協約違反と不当解雇【実際の判例に学ぶ】

労務

 

いつもお世話になっております。東京コンサルティングファーム・マニラ支店の早川でございます。今回も、実際に労働裁判となった例と共に、どういうところで労働問題が起こるのかという点と、その防ぎ方について、具体的にご紹介していこうと思います。
(会社名や詳細は伏せておりますが、公に発表されている判例からご紹介しております)
今回ご紹介する例は、労働協約に違反した従業員を解雇したら、不当解雇で訴えられた、というケースです。

 

<労働裁判までの経緯>
とある製造業S社で働いていたB氏は、入社当時からその会社の労働組合に加盟。労働組合と会社との間には、労働協約(CBA)が結ばれており、そこには“Closed Shop条項”が記載されていた。
“Closed Shop”条項とは、”Union Security“条項など別名も多々あるが、内容としては、特定の労働組合に加入していることを労働者雇用の条件とし、脱退する場合は解雇される、という取り決めを指し、S社も例外ではなかった。
2013年12月、B氏は、現労働組合の代表と仲たがいし、新しい労働組合を作ろうとした。具体的には、それに賛成する者の署名活動を始めた。2014年2月、現労働組合は話し合いのため面談の機会を設けたがB氏は参加しなかった。
同年2月末、現労働組合から、不誠実のため除名する旨の通知が送られ、また3月に、解雇通知が発行された。これに対し、B氏は、不当解雇だとして労働裁判を起こした。

 

<控訴裁判所の見解>
署名活動だが、実際には何も書かれていない書類に署名をさせただけ。それが違反行為だとは、どの条項にも書いていない。よって、解雇の十分な理由としては認められない。

 

<最高裁判所の見解>
以下の条件がそろっていれば、解雇自体は正当なものである。
(1) Closed Shop条項の対象社員であること→B氏は対象であった
(2) 労働組合がその解雇を希望すること→除名通知に記録がとってあった
(3) 労働組合の決議を裏付ける証拠があること→署名活動をしていたことの証人がいる
上記の状況から、解雇自体は正当な判断だと言える。しかし、解雇の方法は、他の解雇と同じで、順序を踏まなければならない。ここでは、以下の手順が必要となる。
①第一通告:解雇の原因となる行動を書面にて指摘すること
②第二通告:解雇すると決めた、という通達を書面にて行う事
③必要であれば面談を行う事。
今回、この3つの手順は踏まれなかったため、損害賠償として会社に30,000PHPの支払いを命じる。

 

<ポイント>
大事なのは、例え労働協約の違反による解雇だったとしても、従業員が自分自身を守る機会を与えたという事を、書面に記録している必要があるということです。
突然の解雇通知は、どんな社員にも反発を買います。いかなる事情でも慎重に通達を行う必要があります。この最高裁の見解では「必要であれば」面談を行う事、と、あいまいな書き方をされていますが、少なくとも面談を行おうとしたという記録(招集通知など)は保管されることをお勧めいたします。
労働協約だけでなく、就業規則の違反にも、同じことが言えます。
ご参考になれば幸いです。

 

 

東京コンサルティングファーム・マニラ拠点
早川 桃代

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