インドとメキシコ、そして韓国と日本

東京コンサルティングファーム

メキシコダイレクター

片瀬 陽平

いつもチェックして頂きありがとうございます。メキシコ駐在員の片瀬でございます。

最近では、お客様からブログを読んでいるとの、お声も多くいただき、大変嬉しく思っております。少しでも良い内容を皆様に届けられればと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。 

メキシコは現在、日系自動車メーカーの進出に伴い、関連する自動車部品メーカー等の進出が非常に多くなっております。これら企業の進出はバヒオ地区(中央高原地区)に集中し、近年では年間100社前後の企業がメキシコに進出しています。この状況は、2014年中は続くものとみられ、特に2014年は中小企業のメキシコへの進出が非常に多くなるものと思います。 

この様な現状のメキシコ。今後進出する方たちに資する情報をいつもは意識して書いておりますが、今日は、いつもとは趣を変えて読み物として面白い物を作ろうと考えています。

<インドとメキシコ、そして韓国と日本>

もう5年以上前になりますが当時のインドは、今のメキシコと非常に似て日系企業の進出ラッシュが起こっていました。家電メーカーおよび自動車メーカーを筆頭に、それに伴う部品メーカーもインドに積極的に進出をし、インドブームが起こっていたように思います。 

ただし、結果としてはこのインドブームに乗ってインドに進出した各種メーカーはことごとくインドでは成功できませんでした。日本の企業が進出に苦戦している間に、家電メーカーではサムスンとLGが、自動車メーカーでは現代自動車が大きくそのシェアを獲得しました。特に家電メーカーのサムスンとLGはインドの市場を「席巻」するまでに成長しました。 

彼らは何をしたのか。何をして「席巻」するまでにシェアを伸ばすことができたのか。それは以下のような小さな戦略の違いであったと言われています。 

「日本メーカーは性能がよく壊れないものを高価格で売り出し、韓国メーカーは性能があまり高くなく壊れる可能性があるものを、壊れたときの保証をつけて低価格で売り出した。」

この様な小さな戦略違いが大きな結果の違いにつながったと言われています。 

ここでメキシコの話を少しすると、メキシコにおいても家電はサムスンとLGが「席巻」しています。以前メキシコ人のマネージャーに、なぜサムスンとLGの家電製品を買うのか聞いたことがあります。すると彼はこの様に答えました。 

「かっこいいから」 

また、インドでも次の様な話があります。インドの大手自動車メーカータタ自動車が格安車ナノの販売を2008年に開始しました。車が1台20万円程度で買えるということで当時はかなりのニュースになったものと思います。

ただし、これが大失敗。同様にインド人のマネージャーに、なぜナノを買わないのか聞くと、すると彼はこの様に答えました。 

「かっこよくないから」 

消費者はまず、「買うか買わないの判断」をするのに企業は「買わないの判断」は取っ払って考えることが多いように思います。消費者が買う理由は、「かっこいいから」なのに。

世界では、サムスンとLGの製品は「かっこいい」と評価されているのです。そして「品質が良い」と評価されているのです。日本人の感覚は、はっきり言うと新興国の3代先を進んでいると思います。日本人にはみえる韓国製品と日本製品の差(最近はこの差もめっきり無くなってきましたが。)が、新興国の方たちには見えないのです。新興国の彼らからしてみるとどちらも同様に「かっこよく」て「品質が良い」のです。そして、日本製品はめちゃくちゃ価格が高いのです。 

私は思います。もはやサムスンには勝てないと。 

それは、「研究開発費と規模により」です。研究開発費は売上の拡大に貢献し、規模は間接費の削減に貢献します。研究開発費の額をみると、もはや製品の質で韓国に勝つことはできなくなっているのではと思います。

ただし、新興国の方たちの目からは同様に「かっこよく」て「品質が良い」、この状況は続いています。おそらく、今後品質で韓国製品に抜かれる日が来たとしても新興国の方たちにしばらくそれは分かりません。その間に日本企業は体力をつけて、再び研究開発に多額を投資し、規模を拡大し、現地に根付いた商売をする。 

新興国の方たちは価格が同じであれば絶対に日本製品を買ってくれます。新興国の方たちの心証は間違いなく、「韓国よりも日本が好き」です。これは本質であると思いますが、同様に「現状においては」であるとも思います。とにかく韓国は国のブランディングがめちゃくちゃうまいのです。 

日本人は全ての分野において世界に出なければなりません。「和食」が世界文化遺産になるのは1つ良い傾向ですが、文化だけを一人歩きさせてはなりません。大切なのは日本人が世界に出ることです。日本人が世界に出て、実際に現地の方とコミュニケーションをとり、互いに高めあい、時には喧嘩してと、地に根を張り活動しなければならないと私は考えています。

人は想像する生き物です。想像した人にとってはその想像したことが現実です。私は日本の素晴らしい文化を海外の方たちの勝手な想像の上に成り立たせてはいけないと考えています。 

LCCとは“Low Cost carrier”のことですが、最近では格安航空会社だけではなく、製造業においてもこの言葉が使われるようになってきました。製造業におけるLCCとは“Leading Competitive Countries”の略であり、世界を一つのマーケットと見てもっとも競争力のある国、地域から調達を行うことです。 

インドにおいてサムスンとLGが成功して、日本メーカーが成功できなかった理由はこのLCCへの移行がスムーズにできなかったためであると私は考えます。そして今後メキシコやその他の新興国において日本企業が成功するためにはLCCによる生産を真剣に考え、実践していかなければなりません。 

LCCを実践しなければ、世界で成功することは難しいのですが、LCCを実行しても新たなインパクトが副次的に発生してしまいます。これが今回のブログの一番伝えたかった部分です。 

これはインドで実際に起こった事ですが、大手メーカーやティア1規模のメーカーがインドに進出する際に、彼らはティア2、ティア3に声をかけ進出していました。最初の内は良かった。ただ、韓国メーカーの台頭により、インドでのビジネスが上手くいかないとわかると、彼らはLCCに段階的に移行していきました。 

LCC、LCCとは競争力のある国、地域からの調達です。そして、それは日本からではありませんでした。 

つまり自分たちが、ある種“進出させた”企業から現地企業への乗り換えが起こったのです。お互いにビジネスであるために仕方がないことではありますが、中小企業はインドに夢を膨らませて進出したのに、残ったのは負債だけという状況に陥りました。 

私は思うのです。中小企業が海外で成功するためには大手メーカーよりも先にLCCに移行しなければならないと。日本の素晴らしい技術・文化を現地人に理解させ、日本のIdentityを持った現地人の育成をしなければならないと。

LCCによるコスト削減で価格面をローカライズし、理念は日本の会社のそれにする。この様な会社ができれば絶対に現地の会社などには負けません。 

2014年は中小企業のメキシコ進出が非常に多くなります。幸いにもメキシコには韓国や中国の自動車メーカーは入ってきてはいません。すぐにインドと同じ様な状況に陥ることはないと思いますが、メキシコにおいても現状のまま永久に続くということもまた考え辛いのです。 

メキシコに限らず、日系企業の海外進出は今や小さな企業の社長からも話がくるようになりました。完全に海外進出ブームであると思います。そしてうまくいかない会社はいつも経験のない中小企業。

私は皆さんの予期せぬ事をなくすため、経験のない方たちでも同じフィールドで戦えるために、今後も発信を続けていきます。よろしくお願いいたします。 

次回からは、また、メキシコ国内の規定等を分かりやすくお伝えします。以下はお知らせとなります。ふるってご応募ください。

【お知らせ】

2月の1月間の間、新宿本社においてメキシコビジネスに関する無料相談会を開催しようと考えています。メキシコの情報を日本で取ることはなかなかに難しく、そのため進出の検討段階ではお金をかけてメキシコに渡り現地の情報を集めるしか無いのが現状です。

当無料相談会の意義は、「日本にいながら現地の情報を集める」ことであり、お金をかけずに現地の情報を集めることができます。是非お気軽にお問い合わせ頂ければと思います。

<無料相談会>

日時       :2014年2月3日(月) ~2014年2月28日(金)

会場       :〒160-0022 東京都新宿区新宿2-5-3 AMビル7F

会費       :無料

担当  :佐々木 亮介(USCPA)

時間  :1時間~2時間

申込方法:TEL/03-5369-2930 FAX/03-5369-2931

・メキシコ無料相談会の件とお伝えください

 

【今週の1枚】

 

今回はメキシコの図書館の写真を1枚。趣があり、この中で静かに本を読みたくなるような不思議な場所でした。

 

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